ディスキングとは?矯正で歯を削る必要性と症例
ディスキングは「IPR」や「ストリッピング」とも呼ばれ、矯正治療においてスペースを作るために歯を一層削ることを指します。
歯を削ることに抵抗を感じる方もいらっしゃると思いますが、基本的にはエナメル質の3分の1程度に限局して削るため、痛みはほとんど感じません。
それでは、どのような場合にディスキングが必要になるのでしょうか。
この記事では、矯正治療でディスキングが必要な具体的な症例やディスキングの方法などを解説します。
この記事を読むことで、ディスキングの概要や症例、ディスキングを回避する方法などを理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。
こんな疑問を解決!
- ディスキングでスペースを確保する方法やリスク
- ディスキングが必要な症例
- インビザラインでディスキングを応用する方法
- ディスキングで使用する器具
- ディスキングを回避する方法
目次
ディスキングとは
ディスキングとは歯冠の辺縁を切削し、矯正治療に必要なスペースを作ることを指します。
歯の構造は表層からエナメル質、象牙質、歯髄の三層構造で、ディスキングはこのエナメル質に限局してコンマ数㎜切削します。切削したとしても最大で0.5㎜です。
これを仮に全顎的に行うと、上下顎でそれぞれ最大6.5㎜ほどのスペースが作ることができるので、およそ前歯または小臼歯1本分のスペースを作ることができます。
ディスキングすることによるリスク
ディスキングはエナメル質に限局して切削するため、切削時の疼痛や、切削後の知覚過敏等が起こることはほとんどありません。万が一、知覚過敏の症状が出た時は知覚過敏用の薬を塗布して対応します。
また、歯を切削することによって、虫歯になりやすくなるという指摘もありますが、逆にディスキングによって切削された歯面は再石灰化を起こし、虫歯に対して抵抗を示すというデータもあります。
矯正治療でディスキングが必要な症例
では矯正治療をするにあたって、どのような症例でディスキングが必要になるのでしょうか。
歯の大きさがアンバランスな時
歯並びはもちろん綺麗に配列されていることも大切ですが、元々の歯の大きさが上下顎、あるいは左右で大きく異なると綺麗に見せることができません。
このように歯の大きさがアンバランスな時に、ディスキングによって大きさを調整します。ただし、アンバランスの度合いがあまりに大きい時はディスキングによる対応が難しくなります。
前歯を舌側(舌がある側)に傾斜させる
上下顎の両方、あるいは一方の前歯が前突していると、いわゆる出っ歯となってしまいます。ディスキングによって作られたスペースを利用して、歯を舌側に傾斜することが可能です。
ただし、前突の度合いが大きいとディスキングでは対応できず、便宜抜歯や側方拡大、臼歯部の後方移動等で対応する必要があります。
矯正後の後戻り防止
ディスキングを行うと、歯冠隣接面の接触面積が増加するため、後戻りしにくいとされています。
ブラックトライアングルの防止
ブラックトライアングルとは、元々の歯の豊隆が強い方や、歯肉退縮や歯槽骨(歯を支える骨)の退縮が起きている方が、歯と歯の間の歯と歯肉との境付近に三角形の空間ができてしまうことです。
ブラックトライアングルが前歯部に起こると、審美的な障害が出てしまいます。ディスキングによって歯の豊隆が少し弱くなるため、このブラックトライアングルを解消することができます。
インビザラインでどうディスキングを応用するか
インビザラインではクリンチェックを用いて、事前にディスキングするところをプログラムすることができます。また、必要に応じてディスキングする量を増減したり、ディスキング自体を回避する指示を出すことができます。
インビザライン矯正の場合は、矯正治療による歯肉の形態変化まで追うことが最初のクリンチェック(歯の移動の3Dシミュレーション)上では難しいです。そのため、もしブラックトライアングルができてしまった場合は、追加のディスキングとマウスピースで対応することをお勧めします。
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ディスキングする器具について
ディスキングする方法は以下の2つがあります。またディスキングした部位が、しっかりと目的の量が切削されているかどうかを確認するためのゲージや、ディスキングした部分を研磨するストリップスもあります。
ディスキング用のヤスリ
歯と歯の間にヤスリを入れて削っていきます。ヤスリにハンドルを装着して手で削る方法と、エンジンに装着して機械的に削る方法の2種類があります。
ディスキング用のバーやディスク(円盤状の切削器具)
ディスキング用のバーやディスクをエアタービンに装着し、切削していきます。エアタービンで切削するため、ブレないよう、より精密な手技が必要となります。
ディスキングを回避するには
ディスキングをする目的は、矯正で必要なスペースを作るものですが、歯を切削することに抵抗がある方は少なからずいらっしゃいます。ディスキングを回避する方法には以下のものがあります。
便宜抜歯
歯を1本、ないしは2本抜歯することによってスペースを作ります。
基本的には第一小臼歯、第二小臼歯が選択されることが多いです。虫歯や歯周病で保存することが難しい歯や、予後が悪い歯が選択されることもあります。
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側方拡大
歯列弓を装置によって、機械的に頬側に拡大します。頬側に拡大することによって、スペースが作られます。
成長期でない限り、側方拡大によって歯体移動(骨の中で歯冠から歯根までの角度を変えないで歯が移動すること)できる量には限度があり、基本的には傾斜移動になることが多いです。
臼歯の後方移動
大臼歯及び小臼歯を後方に移動させ、スペースを作ります。
ワイヤー矯正では一般的に難しく、インビザラインをはじめとするマウスピース矯正が得意とする分野です。ただし、最後方臼歯の後ろに骨がないと移動することができません。
【まとめ】ディスキングとは?矯正で歯を削る必要性と症例
ディスキングが必要となる症例やディスキングを回避する方法などを解説しました。
この記事では、下記のようなことが分かったのではないでしょうか。
ここがポイント!
- ディスキングで削るのはエナメル質のごく一部だが、全顎的に行うと上下それぞれ最大6.5㎜ほどのスペースを確保できる
- ディスキングは知覚過敏のリスクはほとんどなく、虫歯については逆に抵抗を示すというデータもある
- ディスキングが必要となる症例としては、歯の大きさにばらつきがある場合、前歯を下側に傾斜させたい場合のほか、矯正後の後戻り防止やブラックトライアングルを改善したい場合などがある
- インビザラインでは、事前にディスキング部分をプログラムでき、削る量の加減やディスキングを回避する指示を出すこともできる
- ブラックトライアングルの改善にディスキングが有効な場合もある
- ディスキングで使用するのは、専用のヤスリやバー、ディスクなどで、切削量を確認するゲージや研磨に使用するストリップスも必要
- ディスキングを避ける方法としては、抜歯、側方拡大、臼歯の後方移動などがある
ディスキングは、矯正治療のオプションとして欠かせないものです。
適切に処置を行えば痛みはほとんどありませんが、歯を削ることに抵抗がある場合はほかの処置方法もあります。
代替処置が適応になるかどうかは、かかりつけの歯科医院で相談されることをおすすめします。
東京歯並び矯正歯科の歯列矯正では、診査診断後にディスキングや抜歯などの可能性について、必ず患者様の同意を得たうえで治療を開始いたします。
ディスキングについてご不安などありましたら、まずは歯科医師の診察にてご相談ください。丁寧にお答えいたします。