インビザライン矯正での顎間ゴムによるゴムかけによる効果

顎間ゴムは上顎の歯と下顎の歯にゴムを引っ掛ける矯正器具で、咬み合わせや顎のズレを修正する装置です。顎間ゴムは顎間ゴム単独で装着することは珍しく、従来のワイヤー矯正やインビザラインをはじめとするマウスピース矯正と組み合わせることによって利用することが多いです。
このコラムでは、インビザライン矯正と顎間ゴムを併用した矯正治療について紹介していきます。
目次
顎間ゴムとは
顎間ゴムは上顎と下顎に矯正用のゴムを引っ掛けることによって歯に力をかけ、歯並びを改善する装置です。ゴムの太さや大きさによってかかる力が異なります。
❶Ⅱ級ゴム
下顎の臼歯部から上顎前歯部あるいは犬歯に向かってかける顎間ゴムであり、上顎前歯の舌側移動、及び上顎犬歯、上顎臼歯の遠心移動を目的として付与します。下顎臼歯の近心移動を目的として用いる場合もあります。
❷Ⅲ級ゴム
上顎の臼歯部から下顎の前歯部、または犬歯に向かってかける顎間ゴムです。下顎前歯の舌側移動、下顎犬歯、臼歯の遠心移動を目的として付与します。上顎臼歯の近心移動を目的として用いる場合もあります。
❸垂直ゴム
上下顎に垂直にかけるゴムです。開咬の治療に用います。
❹交叉ゴム
一方の唇側から反対側の顎の舌側に向かってかける顎間ゴムであり、鋏状咬合(通常は上顎の歯列弓が下顎の歯列弓の外側にきますが、鋏状咬合では逆になっている)の治療に用います。
インビザライン矯正における顎間ゴムの効果
インビザラインでは顎間ゴムを併用する際、インビザラインで使用するマウスピースに2種類のどちらかの加工を付与します。
一つはプレシジョンカットです。
プレシジョンカットは、インビザラインで使用するマウスピースにおける近心および遠心のフック加工により、ボタンを設置することなく顎間ゴムの使用が可能です。犬歯および臼歯の頬側に設置することが可能です。
もう一つはボタンカットです。ボタンカットは歯に接着されるボタンに対応した加工をマウスピースに付与します。犬歯、小臼歯、大臼歯の頬側または舌側に設定が可能です。
使用されるボタンにはプラスチックのボタンや金属製のボタンがありますが、審美的な問題や接着力の問題から、部位によって適切なボタンが選択されます。通常前歯部の場合はプラスチック製のボタン、臼歯部には金属製のボタンが使用されることが多いです。
インビザライン矯正の場合、顎間ゴムの力がマウスピースを通して全ての歯に分散するため、比較的強い力の顎間ゴムを使用することが多いです。そのため、強い矯正力によって顎関節症状が出た場合は顎間ゴムの力を少し弱くする、矯正用のアンカースクリューからの牽引などを検討します。
顎間ゴムをかけるためのプレジョンカットやボタンカットが壊れたり、ボタンそのものが取れてしまった際は、すぐにかかりつけの歯科医院を受診するようにしましょう。
インビザライン矯正での顎間ゴムは矯正治療中ずっとゴムをしているわけではなく、ある一定期間だけです。基本的には、インビザライン矯正を始めて少し歯が動いてから顎間ゴムを始めることが多いです。
インビザライン矯正における顎間ゴムのかけ方
顎間ゴムは、アライナーの着脱ごとに患者さん自身で着脱しなければいけません。手指で行うことも可能ですが、ゴムをかけにくい場所であったり、かける場所が大臼歯の場合は手指で行うことが困難です。その場合はゴムをかける専用のスティックやピンセットがあるので、それに引っ掛けて着脱するようにすると良いです。
また顎間ゴムの治療が開始する際には、必ず事前に着脱の練習を通院している歯科医院でよく行うようにすることをお勧めします。
インビザライン矯正中における顎間ゴム使用中の注意事項
最後にインビザライン矯正中に顎間ゴムを使用することで起こりえるリスクや注意点についてみていきます。
❶痛みが出ることがある
特にゴムをかけたての際は痛みが出ることがあります。
慣れてくれば痛みが治まることが多いですが、どうしても痛みが我慢できない場合は痛み止めを服用することをお勧めします。
❷飲食時は顎間ゴムを外す
インビザライン矯正で使用するマウスピースと同様に、飲食時には顎間ゴムは外すようにします。顎間ゴムをしたまま飲食をすると、顎間ゴムやマウスピースの破損につながります。
❸顎間ゴムを1日1回は取り替える
顎間ゴムは1日使用していくと、顎間ゴムの弾性力が弱くなってきます。常に同じ力がかかるように、顎間ゴムを1日1回は取り替えることが大切です。
また、ゴムが切れた場合はすぐに新しいものに取り替えるようにしましょう。
❹鏡を見ながらゴムをかけるようにする
慣れてくれば鏡を見なくとも顎間ゴムを交換することは可能ですが、最初のうちは鏡を見ながら装着した方が無難です。
専用のスティックやピンセットを使用しても着脱が難しい場合は、通院している歯科医院に相談しましょう。
【まとめ】インビザライン矯正での顎間ゴムによるゴムかけによる効果
インビザライン矯正における顎間ゴムは、補助装置として利用していきます。
全ての症例に必要なわけではありませんが、自分でゴムを引っ掛けなければならず、管理が少し難しいです。しかし、理想的な歯並びを得るためには必要な装置なので、顎間ゴムの使用を指示された際には、しっかりと歯にかけるようにしましょう。