歯列がクロスする交叉咬合(クロスバイト)とは?その原因・症状・矯正治療
歯並びには個性があり、一見問題なさそうに見える歯並びであっても、咬合すると一部の上の歯と下の歯が逆に咬み合う人がいます。これは交叉咬合(クロスバイト)と呼ばれ、歯列の中で正常な咬み合わせと上下逆の咬み合わせが混在している咬合状態をいいます。
「いつも同じ方ばかりで咬んでしまうので顔の歪みが気になる」「子どもの永久歯の一部が上下逆になっていて治療が必要か知りたい」など、交叉咬合にまつわる悩みは、大人から子供まで幅広い年齢層から聞かれます。
この記事では、交叉咬合の基礎知識や治療法について解説します。
この記事を読むことで、交叉咬合の原因と症状や治療について理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。
こんな疑問を解決!
- 交叉咬合(クロスバイト)とは?
- 交叉咬合になる原因
- 交叉咬合になるとどんな症状が起こるの?
- 交叉咬合の治療にはどんな方法があるの?
目次
交叉咬合(クロスバイト)とは
噛み合わせた際に、上顎の歯が下顎の歯の一部に覆いかぶさり、重なった状態を“被蓋(ひがい)”と言います。
正常な被蓋では、上顎が下顎の歯の上から2~3㎜程度覆いかぶさり、上顎の歯列の中に、下顎の歯列が取り囲まれるように咬むことが理想的です。
一方、交叉咬合(クロスバイト)の場合には、一部の歯列において下顎の歯が上顎の外側から咬合する、正常な被蓋と逆になっています。
交叉咬合の原因とは
交叉咬合は、遺伝などの内因的な要因の他、頬杖や咬み癖など外因的な要因にも影響されます。単一の要因の他、いくつかの要因が重なり合って起こる場合があります。
遺伝
直系の家族に交叉咬合がある場合には、遺伝により交叉咬合になることがあります。それは、歯の大きさや顎の大きさが遺伝に少なからず影響されるため、歯列にも表れるためです。
習癖
頬杖の習癖は注意が必要です。 頬杖をつくことで歯列の水平方向から力が加わるため、上顎の歯が内側に傾き交叉咬合になることがあります。その他にも、咬み癖や就寝時の向き、楽器演奏などの影響を受けることがあります。
顎のズレ
特に成長過程において、上下の顎の骨の位置関係や大きさのバランスが崩れてしまうと、歯列を補正することで咬合力を補おうとすることがあります。
また、顎関節症などにより口の開閉に非対称がある場合にも、咬合力の負担において左右非対称が生じ、歯列が交叉咬合となることがあります。
補綴物による咬合の設計不良
補綴物(詰め物や被せ物、入れ歯)の設計は、見た目の回復以外に、咬合を理想的な状態で維持するために行われます。しかし、不適切な設計により理想的な咬合状態が崩れてしまい、交叉咬合になることがあります。
交叉咬合の症状とは
交叉咬合は臼歯部の場合には、歯列の不正が目立ちません。そのため、治療しなくてもよいのでは?とも思われがちです。しかし、審美的な問題の他に、身体への負担があるため、治療を行うことをおすすめします。
顎成長の阻害
成長途中における交叉咬合は、下の歯が上の歯の移動範囲を制限するため顎の発達を阻害することがあります。上顎が劣成長となり、側貌が理想的なラインに比べて、凹になることがあります。
顔面の非対称
左右の一部分に交叉咬合がある場合、咬合力の負担や咀嚼の習慣にアンバランスが起こりやすくなります。結果として、お顔の表情筋に影響が起こり、顔貌が左右非対称になります。
咀嚼障害
交叉咬合がある部分では、食べ物の裁断やすり潰す動きが難しくなり、日常的に左右一方に咬み癖がつきやすくなります。
食塊の流動の不良
交叉咬合の方は、お食事中に無意識のうちに、舌を使って頬と歯列の間をなぞることがあります。これは通常、上の歯列に囲まれる下の歯列が一部外側に並んでいることで、頬と歯列の間に食塊が溜まりやすく、嚥下までの動きがスムーズにできないためです。
発音障害
発音の明瞭さは、慣れによって改善されるため交叉咬合による目立つ発音への影響はないかもしれません。しかし、交叉咬合により歯の傾斜や位置関係が不良の場合には発音に影響が出る可能性は否定できません。
顎関節症
咬合力が左右非対称になることが考えられるため、顎関節の一方が過剰負担となります。結果として、顎関節の疼痛や、お口の開閉時に雑音の発生などが起こることがあります。
肩こりや頭痛
咬合力が左右非対称に負担されることにより、筋肉が左右非対称に発達し機能することがあります。筋肉運動のアンバランスが姿勢にも影響し、肩こりや片頭痛を引き起こします。
交叉咬合の治療方法とは
交叉咬合は、歯列矯正治療によって改善することが可能です。
様々な症例に対応可能なワイヤー矯正はもちろんのこと、交叉咬合が限定的であり、軽度の場合にはマウスピース矯正を選択することも可能です。
ワイヤー矯正
歯列に接着するブラケットとワイヤーの他に、以下の装置を採用することが多いです。
拡大の速さは下記の順になります。
- ❶急速拡大
- ❷クワドへリックス
- ❸拡大床
急速拡大装置
装置の中央に拡大ネジがあり、上顎の正中口蓋縫合という接合部を左右に拡げることで、歯列の幅を拡大する装置です。
クワッドヘリックス
歯の裏側に、ループ状に作ったワイヤーを接触し歯列をゆっくりと側方に拡大します。
拡大床
取り外し可能な装置で、歯列弓の幅を広げることや、歯の移動、歯の傾斜の改善に使用します。
マウスピース矯正(軽度な場合)
取り外し可能なマウスピースを一定時間装着し、マウスピースを段階的に取り換えていく治療方法です。
すべての交叉咬合がマウスピース矯正の対象ではなく、対象となる歯数や歯の傾きによって、マウスピース矯正では対応ができないことがあります。
【まとめ】歯列がクロスする交叉咬合(クロスバイト)とは?その原因・症状・矯正治療
交叉咬合(クロスバイト)について、その症状や原因、治療法などを解説しました。
この記事では、下記のようなことが理解できたのではないでしょうか。
ここがポイント!
- 交叉咬合(クロスバイト)とは、一部の歯列で下顎の歯が上顎の外側から咬合して被蓋が逆になった状態をいう
- 交叉咬合には内因的な要因と外因的な要因、複合的な要因があり、以下のようなことが挙げられる
・遺伝:歯や顎の大きさが直系の家族の遺伝に影響されるため
・習癖:頬杖や咬み癖、就寝時の向き、楽器演奏などの習癖の影響
・顎のズレ:成長過程における上下顎の位置関係やバランスの崩れ、顎関節症による咬合の左右非対称
・補綴物の設計不良:補綴物の不適切な設計で咬合状態が崩れたため - 審美的及び身体への負担がある交叉咬合の症状は以下の通り
・顎成長の阻害:成長途中では下顎が上顎の劣成長を引き起こし、側貌が凹になることがある
・顔面の非対称:左右の一部交叉咬合では、咬合力や咀嚼のアンバランスが表情筋に影響して顔貌が左右非対称となる
・咀嚼障害:食べ物の裁断やすり潰しが困難になり、日常的に片側の咬み癖がつきやすい
・食塊流動不良:下の歯列が一部外側に並ぶことで頬と歯列間に食塊が溜まりやすく、嚥下がスムーズにできないことがある
・発音障害:慣れにより改善することもあるが、歯の状態によっては発音に影響が出る可能性がある
・顎関節症:左右非対称により片側の顎関節に過剰負担が起こり、疼痛や開閉時の雑音などが起こることがある
・肩こりや頭痛:左右非対称な筋肉運動によるアンバランスが姿勢に影響して、肩こりや頭痛を引き起こすことがある - 交叉咬合は矯正治療で改善可能であり、次のような治し方がある
・ワイヤー矯正:ブラケットとワイヤー以外にも採用される装置がある
❶急速拡大装置:中央の拡大ネジで上顎の接合部を左右に広げて歯列幅を拡大
❷クワッドヘリックス:裏側にループ状のワイヤーを接触させ歯列を側方に拡大
❸拡大床:歯列弓の幅の拡大や歯の移動、歯の傾斜改善に使用する着脱式装置
・マウスピース矯正(軽度な場合):着脱式のマウスピースを段階的に交換する治療法で、歯数や歯の傾きによって対応できないことがある
交叉咬合(クロスバイト)は、遺伝や習癖といったさまざまなことが要因となって起こります。
遺伝の場合は先天的な要素ですが、習癖によるものであれば日常生活の中で交叉咬合の原因となり得る癖を除去するよう取り組むことが大切です。習癖を除去しなければ、たとえ矯正治療によって改善しても元に戻ってしまう可能性が高くなります。
交叉咬合が臼歯部の場合は、外から見ても目立つことはほとんどありませんが、咬合不良により体に悪影響を及ぼす原因となります。
顔貌や咬合機能を左右バランスよく維持するためには、矯正治療を受けることが望ましいと言えます。保険適用ではないため値段は高額になりますが、長い人生の健康を確保するための投資だと考えるといいかもしれません。
東京歯並び矯正歯科は、これまでに多くの交叉咬合の症例を治療してきました。咬合の状態に合わせた最適な治療法を選択することで、無駄なく確実な成果を得ることができます。気になる値段や治療法、期間など交叉咬合治療に豊富な実績をもつ当院の歯科医師に相談してみてください。