転位歯とは?その原因と治療法
「転位歯」とは、本来生えるべき位置から前後左右などにずれて生えてしまった歯のことで、歯の位置異常の一つです。
転位歯となる理由は複数ありますが、この状態を放置することは、歯がガタガタに生えている見た目の問題だけでなく、歯ブラシがうまく当てられないことが原因となり、虫歯や歯周病のリスクが高まるなど、さまざまなお口の問題を引き起こす原因となります。
この記事では、転位歯について解説します。
この記事を読むことで、転位歯が生じる原因と、放置することで引き起こされる問題、その治療法などについて理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。
こんな疑問を解決!
- 転位歯はなぜ本来の位置からずれて生えてきてしまうの?
- 転位歯をそのままにしておくとどんな問題が起こる?
- 転位歯を治す治療方法とは?
目次
転位歯の原因
歯が転位して萌出する原因には、次のような要因が挙げられます。
顎の大きさが小さい
現代の食事は硬いものをあまり咬まなくなったため、柔らかいものが中心となりました。その結果、顎の成長が未発達になることもしばしばあります。
これにより本来できるはずの歯の萌出スペースがなくなり、転位歯が起こる可能性があります。
先天的疾患
生まれつき持っている疾患を先天的疾患と言いますが、これが口腔内に影響すると転位歯が生じる可能性があります。
代表的な例は口蓋裂です。口蓋裂は日本人の中では500人に1人の割合で生じる先天性疾患です。口蓋裂は生まれつき口蓋が裂けていて、口腔と鼻腔が繋がり、摂食障害や発音障害、呼吸障害などの様々な障害が生じます。
親知らずが臼歯部を押してしまう
日本人は顎が小さいため、親知らずがよく横向きに生えてきます。
横向きに生えた親知らずは、その萌出力で臼歯部を押すことがあるため、その力が前歯部や小臼歯部に伝わり、転位歯が生じることがあります。親知らずの抜歯が根本的な解決方法になります。
乳歯の晩期残存
永久歯が正しい時期に萌出しようとした際に、口腔内に先行乳歯が残存すると、永久歯の正しい萌出を阻害します。よって後続永久歯が転位歯として萌出してくることがあります。
永久歯の頭が見えた状態で、先行乳歯が残存している場合は、速やかにかかりつけの歯科医院で乳歯を抜歯してもらうことをお勧めします。
転位歯を生じると起こる問題
転位歯によるリスクには、次のようなものがあります。
噛み合わせが悪くなる
転位歯が生じると上顎の歯と下顎の歯がうまく咬み合わなくなり、食べ物をうまく咬めなくなり、咀嚼障害が起こることがあります。
また咬めなくなる部位が出現することにより、他部位に負担がかかることになり、咬合性外傷を引き起こすこともあります。
見た目が悪くなる
転位歯が生じると歯列のバランスが崩れるため、見た目が悪くなります。特に前歯部で転位歯が生じている場合は笑った際に歯が見えるため、審美障害を引き起こしやすいです。
話しづらくなる
転位歯が舌側または口蓋側に生じた場合、話すときに舌の動きを阻害することがあるため、話しづらくなる場合があります。
虫歯や歯周病になりやすくなる
転位歯が生じると、セルフコントロールが難しくなります。特にデンタルフロスが通しにくい場合は、隣接部から虫歯や歯周病になりやすいです。
転位歯の治療法
では転位歯の治療法には、どのようなものがあるのでしょうか?
抜歯
転位歯を抜歯しても特に審美的、機能的に問題がない場合は歯を抜歯することもあります。
抜歯後わずかな隙間が生じたり、歯の形が気になる場合は矯正治療や補綴治療を追加で行う場合もあります。
床矯正
歯槽骨の骨幅不足で転位歯が生じている場合は床矯正治療が有効です。
床矯正は入れ歯のように可綴式(自分で取り外し可能)の装置で、自分でネジを巻くことによって骨幅を広げ、転位歯を理想の歯列弓に戻す治療です。
ただし、基本的には床矯正の対象となるのは成長期の子供だけで、成長が終了した大人では広げる量に限界があります。
床矯正終了後に仕上げとして、ワイヤー矯正やマウスピース矯正を併用する場合があります。
ワイヤー矯正
転位歯に矯正力をかけて元の歯列弓に組み込む場合、転位歯を組み込むスペースが十分にある、または少しだけ足りない程度であれば従来のワイヤー矯正でも治療可能です。
頬側(ほっぺ側)にワイヤーを装着する通常のワイヤー矯正と、舌側にワイヤーを装着する舌側矯正があります。
もしスペースが足りない場合は、便宜抜歯をしてスペースを作ることもあります。
ワイヤー矯正は固定式の矯正装置で装置の管理は簡単ですが、プラークコントロールが難しいため、虫歯や歯周病を惹起しやすいです。
マウスピース矯正
インビザラインを始めとするマウスピース矯正は、転位歯に対する矯正も適応となることがあります。
特にインビザライン・ファーストは混合歯列期(大人の歯と子供の歯が入り混じった状態)が対象のインビザラインシステムで永久歯列になる前に介入できるため、転位歯防止に非常に有効です。加えて混合歯列期は歯が動きやすいため、治療期間も短くなりやすいです。
気になる転位歯がマウスピース矯正で適応か否かは、まずは歯科医院で診査を行わなければなりません。
ワイヤー矯正と比べてマウスピース矯正は可綴式の装置のため、清掃性は上がります。しかし固定式ではないため、患者さんの意思でしっかりと装置を装着していないと思うように歯が動かないため、患者さんの協力が不可欠になってきます。
【まとめ】転位歯とは?その原因と治療法
転位歯が生じる原因や引き起こされる問題、治療方法について解説しました。
この記事では、下記のようなことが分かったのではないでしょうか。
ここがポイント!
- 転位歯が生じる理由には、顎の大きさが小さく歯が生えるスペースが不足していること、抜けずに残った乳歯や親知らずの影響によること、先天的な疾患によるものなどが挙げられる
- 転位歯を放置すると、見た目の問題や話しづらさだけでなく、噛み合わせが悪くなったり、虫歯や歯周病のリスクが高まったりする
- 転位歯の治療は矯正治療で歯並びを整え、機能的、審美的に影響がない歯であれば抜歯をしたりして治療する
転位歯は顎骨の成長不足、及び顎骨の幅が足りないため、また先天的な疾患などによって、歯牙が歯列弓の外側、または内側に生えてきてしまう歯牙のことです。
転位歯を生じさせないためにも、お子様の歯の生え変わり時期の様子や親知らずの生え方など注意深く経過観察し、異常があれば早めに歯科医院へ相談しましょう。
また、生じてしまった転位歯はさまざまなお口のトラブルを生む原因となるため、きちんと対応しておくことで、将来にわたって健康な歯で過ごせる可能性が高まります。
東京歯並び矯正歯科では、転位歯の治療、混合歯列期における歯列矯正にも対応しております。
転位歯でお悩みの方は、まずは当院の診察にて疑問などをご相談ください。女性歯科医師が丁寧に対応させていただきます。