歯列矯正で歯の動きを早めるコルチコトミーとは?
矯正治療は、歯並びを整えて口元の審美的かつ機能的な問題を改善することができますが、年単位の期間がかかるのが最大のデメリットです。
一般的に歯並びの問題が重度であるほど期間がかかり、保定期間まで含めると数年を見越して治療を受ける必要があります。
ただ、矯正治療法は日々進化を遂げていて、懸案とされる治療期間を短くする方法もいくつか用意されています。中でもコルチコトミー(歯槽骨皮質骨切除術)は、加速矯正ともよばれ、外科手術によって歯の動きを加速させて数か月から1年程度短縮することができる治療法とされています。
「結婚式を控えているので早めに歯並びを治したい」「治療期間はできるだけ短くしたい」と考えている人に適した治療といえそうです。
この記事では、コルチコトミーとはどのような治療法かについて解説します。
この記事を読むことで、コルチコトミーで歯が早く動く理由や治療前に知っておくべきことを理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。
こんな疑問を解決!
- コルチコトミーをすると、なぜ歯が早く動くの?
- コルチコトミーってどういう治療をするの?
- コルチコトミーのメリットには何がある?
- コルチコトミーのデメリットは?
- 費用はどれくらい?
目次
コルチコトミーの原理
コルチコトミーは歯槽骨(歯を支える骨)の表層の皮質骨を一部除去し、海綿骨に傷をつけることによって、骨の創傷治癒を促します。この状態で外から矯正力をかけていくと、従来よりも早く歯を動かすことが可能になります。
また、一度創傷治癒が働いた骨はより硬く、安定したものとなるため、矯正治療後の後戻り(歯並びが崩れてしまう)も防ぐことができます。
コルチコトミーの実際
コルチコトミーは外科的な手術になります。
コルチコトミーは頬側、舌側を問わずワイヤー矯正を併用するため、まずはワイヤー矯正に使用するワイヤーを固定するためのブラケットを適切な歯に装着します。
次に麻酔をして、コルチコトミーを施す部分の歯肉にメスを入れて歯槽骨から歯肉を剥離します。
エンジン等を使用して表層の皮質骨の一部を慎重に除去し、中の海綿骨に傷をつけます。剥離した歯肉を元の位置に戻し、糸で縫合していきます。縫合が終了したら、最後にワイヤーをブラケットで固定して終了となります。
コルチコトミーの手術は長時間になることも少なくないため、必要な場合は通常の浸潤麻酔だけでなく、静脈内鎮静法(全身麻酔ではないが、緊張を抑え、リラックスして手術が受けられるよう点滴を施す)が併用されることもあります。
コルチコトミーのメリット
コルチコトミーには、次のメリットがあります。
矯正期間を短縮できる
通常、矯正治療は数年間に及ぶ治療期間になることも少なくありませんが、コルチコトミーを行うことによって、症例によっては数か月まで短縮することが可能です。
結婚式を控えている場合や、様々な事情で矯正治療を長期間受けることができない方に有用な方法と言えます。
動かしにくい歯が動くようになる
歯は骨の中に入っており、骨が硬い人や骨が厚い人は一般に矯正力をかけても動きにくいとされています。また、歯根が長い歯に矯正力をかけても動きにくいとされています。
このような歯の場合、コルチコトミーを行うことによって、矯正力をかけた時に歯が格段に動きやすくなります。また、矯正力をかけたことによる歯根吸収も少ないのが特徴です。
矯正治療後の後戻りが少ない
コルチコトミーを行った歯を支える骨は、創傷治癒が働いているため、従来の骨よりも硬く、安定したものとなっています。よって矯正治療後の後戻りする可能性が低くなります。
抜歯矯正が非抜歯矯正になることもある
コルチコトミーは歯を大きく動かすことも可能なため、従来の矯正では抜歯が必要な症例も、非抜歯で矯正を行うことができるようになる症例もあります。もちろん、全ての抜歯症例が非抜歯症例になるわけではありません。
コルチコトミーのデメリット
コルチコトミーには、次のデメリットがあります。
外科的な手術が必要である
コルチコトミーは外科的な処置となります。基礎疾患がある方や恐怖心が強い方は注意が必要です。
担当の歯科医師とよく相談し、リスクがメリットを上回る場合は、他の方法を選択することもあります。
歯肉退縮が起こることがある
コルチコトミーはフラップを形成するため、手術後歯肉が治癒する過程で歯肉が退縮することがあります。
歯肉が退縮すると、見た目の問題だけでなく歯がしみるという知覚過敏の症状が出る場合もあります。
全ての歯科医院でコルチコトミーを受けることができない
コルチコトミーは、非常に高度な技術が必要な処置です。そのため、全ての歯科医院で受けることができるというわけではありません。
コルチコトミーを矯正治療と併用して受けたいと考えている場合は、矯正歯科で相談するか、ホームページ等でコルチコトミーを行っている歯科医院を検索して受診することをお勧めします。
コルチコトミーの費用
通常の矯正治療と同様に、コルチコトミーも全額自費治療となります。自費治療なため、歯科医院によって値段設定は様々ですが、場合によっては100万円以上かかる場合もあります。
同じ費用でも、術式やアフターフォローが異なることがあります。また、ワイヤー矯正などの矯正治療自体の費用も含めた費用なのかも事前に確認が必要です。
【まとめ】歯列矯正で歯の動きを早めるコルチコトミーとは?
歯列矯正で歯の動きを早める、コルチコトミーについて解説しました。
この記事では、下記のようなことが理解できたのではないでしょうか。
ここがポイント!
- コルチコトミーは歯槽骨表層の皮質骨を除去し、海綿骨に傷をつけて創傷治癒を促した状態に矯正力をかけることで早く歯が動き、さらに後戻りも防ぐことができる
- コルチコトミーはワイヤー矯正と併用する外科手術であり、ブラケット装着後浸潤麻酔や時に静脈内鎮静法を用いて歯肉剥離を行い、エンジンで骨に傷をつけて縫合し、ワイヤーを装着する
- コルチコトミーのメリットは以下のとおり
・矯正治療の期間を短縮することができる
・骨や歯根に歯が動きにくい条件があっても、矯正力がかかりやすく歯根吸収も少ない
・創傷治癒力で骨が硬く安定するため、治療後の後戻りが少ない
・抜歯が必要な症例が非抜歯で治療できることがある - コルチコトミーのデメリットは以下の通り
・外科処置となるためリスク管理が必要
・歯肉剥離を行うため、歯肉退縮や知覚過敏のリスクがある
・高度な技術であり、全ての歯科医院で受けられるわけではない - コルチコトミーは自費治療で歯科医院によっては100万円以上かかることがあり、矯正治療の費用に含まれるのか事前に確認することも必要
矯正治療は時間がかかるものですが、少しでも早くきれいになりたいと思うのは当然のことでしょう。
成果を急いで歯に無理な矯正力をかけてしまうと、歯槽骨や歯根が吸収して、歯がぐらぐらになることがありますが、コルチコトミーはこのようなリスクを軽減して、治療期間を短くすることができる治療法です。
ただ、外科手術のため術後の腫れは避けられません。一般的に腫れのピークは48時間程度といわれ、ダウンタイムが必要です。個人差がありますので異常を感じる時は、我慢せず担当する歯科医師に相談することをお勧めします。
また、コルチコトミーを検討している方は、メリットだけでなくデメリットやリスクについて事前にきちんと説明を受け納得したうえで治療に臨むことが大切です。
東京歯並び矯正歯科では、診察・相談で患者様に納得していただくまでしっかりと説明し、フォローにも力を入れていますので、お気軽にご相談ください。