インビザライン矯正でマウスピースが浮く原因と対処法
インビザラインは優れたマウスピース(アライナー)矯正ですが、歯列に適合すると思っていたマウスピースが歯列から浮くといったことが起こることがあります。
インビザラインで矯正治療を受けた方の多くが、“八重歯や奥歯のあたりでマウスピースが浮く”“歯の根元付近までマウスピースが覆わない”という経験をしています。
実際にマウスピースが浮くといったことは少なくなく、たびたび起こりうることでもあります。
このコラムでは、インビザライン矯正中にマウスピースが浮いてしまう原因やその対処法などについて解説します。
この記事を読むことで、インビザライン矯正中に起こり得るマウスピースの浮きについて理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。
こんな疑問を解決!
- インビザラインのマウスピースが浮くのはどうしてか?
- マウスピースの浮きはどれくらいなら許容範囲なのか?
- インビザラインのマウスピースに浮きがあるときはどうすればいいのか?
目次
マウスピース(アライナー)の理想的な適合状態について
インビザライン矯正では、治療をはじめた当初の段階などでは、理想的な適合状態であっても、歯列からマウスピースが浮いてしまうことがあります。
浮きの許容範囲
インビザライン矯正の開始時、もしくは新しいマウスピースに交換した当初は、マウスピースと歯列は完全に適合するわけではありません。ごくわずかに浮くものです。1〜2㎜程度までの浮き上がりなら正常範囲と考えられます。
浮きを実感する期間
新しいマウスピースで歯からの浮き上がりを実感するのは、装着してから数日間です。
もし、1週間以上経っても歯から浮く感じが続くのであれば、主治医の歯科医師に相談した方が良いでしょう。
マウスピース(アライナー)が浮く原因
マウスピースが浮き、歯の根元に隙間ができる原因について解説します。
マウスピース矯正の特性
インビザライン矯正に限らず、マウスピース矯正で用いられるマウスピースは、歯を移動させた目標となる歯列に適合するように製造されています。言い方を変えると、マウスピースの開始または付け替え始めの歯列には必ずしも適合していません。
このため、部分的にマウスピースが浮くことがありますが、マウスピース矯正の特性によるものなので問題ありません。
使い方:順番間違い
インビザライン矯正では、クリンチェックというコンピューターの3Dシミュレーションの結果に基づいて、将来の交換用のマウスピースも自動的に製造します。
インビザラインの場合、将来の交換用のマウスピースも含めてお渡しするわけですが、それぞれのマウスピースにはステージに対応したナンバーが割り振られています。このナンバーは、マウスピースの袋やマウスピース本体にも記載されています。
インビザラインでは、ナンバー通りにマウスピースを交換していくわけですが、順番を間違い、予定と異なるマウスピースを付けてしまうと、当然ながら歯列に適合しません。
クリンチェックとは?インビザライン矯正前と最中におけるシミュレーションの役割
使い方:アライナーチューイーを使っていない
アライナーチューイーは、マウスピースを歯列に適合させるために開発されたものです。
インビザライン矯正では、アライナーチューイーを使って歯列にマウスピースを装着するようになっています。アライナーチューイーを使わずマウスピースを入れると浮く原因になります。
使い方:装着時間の不足
インビザライン矯正では、マウスピースを1日22時間以上装着しなければ、歯を治療計画通り移動させることができません。歯が移動しなければ、マウスピースも適合しません。1日あたりの装着時間不足があると、マウスピースが歯列から浮く原因となります。
同様に、交換期間が守られていないと治療計画通り歯が移動しませんので、マウスピースが歯列から浮く原因となります。
治療計画とのずれ
インビザライン矯正では、歯の移動をコンピューター上でシミュレーションして、マウスピースを製作します。シミュレーション通りに歯が移動しなければ、マウスピースと歯列が適合しなくなります。
マウスピースの形態不良
インビザライン矯正のマウスピースは、工場で自動的に製造されるため、製造時の誤差はほとんど生じません。
しかし、患者さん自身で洗浄する際の熱による変形など、管理不足からマウスピースに変形を生じることがごく稀に起こり得ます。また、付けたり外したりしている間に変形させてしまうこともあります。
歯に緊密に適合するようにデザインされているため、ごくわずかな変形であっても、歯列に適合しなくなり、装着しても浮きが生じる可能性があります。
アタッチメントの脱落
歯の形態や排列位置などからマウスピースが浮きやすいと考えられる場合は、あらかじめアタッチメントを歯に装着して、マウスピースの保持力を高め浮きにくくします。
アタッチメントが脱落すると、マウスピースの保持力が低下するために浮きやすくなります。
過度な顎間ゴム(エラスティックゴム) の牽引力
インビザラインでは、上下顎の間に顎間ゴム(エラスティックゴム)をかけることがあります。顎間ゴムの弾性を利用して歯列を整えていくのですが、顎間ゴムの牽引力が強すぎると、マウスピースが顎間ゴムの作用で浮く原因となります。
ブラッシング不足
インビザラインのマウスピースは、歯列にかなりタイトに適合するように作られています。
ブラッシング不足で咬合面などに食渣が残ったままになっていると、マウスピースが入りません。ブラッシング不足もマウスピースを歯列から浮かせる原因のひとつです。
マウスピース(アライナー)が浮きやすい場所
前歯部では、側切歯や、低位唇側転位した犬歯、いわゆる八重歯に起こりやすい傾向があります。
臼歯(奥歯)部では、咬合平面にまで達していないような低位の臼歯や近心・遠心方向に強く傾斜した臼歯などに起こりやすいです。
マウスピース(アライナー)が浮いたままになっているとどうなる?
マウスピースが浮いたままで、歯の根元に隙間が生じたままにしているとトラブルの原因となります。
治療効果が得られない
歯列に適合していないマウスピースでは、歯の移動が治療計画通りに進みません。
それだけでなく、歯列不正が悪化する可能性もあります。
口腔粘膜のびらんや潰瘍の原因になる
歯の根元に過度な隙間が生じた状態でマウスピースを使い続けると、マウスピースの縁が口腔粘膜を損傷し、びらんや潰瘍を形成する原因となります。
マウスピース(アライナー)が浮いたときの対処法
マウスピースが歯列から浮く場合の対処法を紹介します。
アライナーチューイーを使う
マウスピースが歯列から浮くのを防止するために、少なくとも1日あたり30分以上はアライナーチューイーを噛むようにしましょう。装着時間が長くなるにつれ、徐々に浮いてくるため、1日の間に適度にアライナーチューイーを噛むことが大切です。
1段階前のマウスピースに戻る
主治医の歯科医師への相談も必要ですが、新しいマウスピースに交換したときに、2㎜以上浮いているなら前の段階の歯の移動が不十分である可能性があります。1段階前のマウスピースに戻して数日過ごし、歯列の状態が治療計画通りになるよう歯列を調整をします。
インビザラインで1段階前のマウスピースを保管するようになっているのは、このためです。
装着時間や交換期間を確認する
インビザラインでは、マウスピースを1日あたり20時間以上装着する必要があります。
装着時間が不足していると、治療計画通りに歯の移動が進みません。マウスピースの装着時間が足りているか確認し、不足しているなら、20時間以上装着するようにします。
また、適切なマウスピースの交換時期より早くマウスピースを取り替えるのも治療計画通りに治療が進まない原因のため、装着期間を確認しましょう。
歯科医院で相談する
“アライナーチューイーを適切に使用する”“1段階前のマウスピースに戻る”などの対処法を行なってみても、マウスピースの適合が改善されない場合は、マウスピースそのものに問題があるまたは、治療計画の変更が必要な可能性が考えられます。
この場合は、主治医の歯科医師に相談するようにします。
【まとめ】インビザライン矯正でマウスピースが浮く原因と対処法
インビザライン矯正のマウスピースは、完全に歯列に適合するわけではなく、つけ始めたときは1〜2㎜は浮いているものです。しかし、それ以上浮くようなら何らかの対処が必要と考えられます。
この記事では、下記のようなことがご理解いただけたのではないでしょうか。
ここがポイント!
- 1〜2㎜程度の浮きが1週間以内におさまる正常範囲
- 2㎜以上浮くならマウスピースの使い方や管理などを見直す必要がある
- 歯列や歯の状態によっては浮きやすいところがある
- マウスピースの浮きの対処法として、アライナーチューイーを使う、1段階前のマウスピースに戻る、装着時間や期間を確認するなどが有効
- 適切な対処を行なっても改善しないようなら歯科医院へ相談する
インビザライン矯正で使うマウスピースの適合状態は、ある程度ご自身で判断できますが、正確な適合状態の判断には専門的な知識が必要です。
マウスピースの装着に違和感のある方は、早めに当院までご相談ください。