インビザライン矯正で歯が痛い原因と痛みが出た時の対処法
インビザラインは、比較的痛みの少ない矯正といわれています。
しかし、その原理は一般的なワイヤー矯正と同じであることから、少なからず痛みが出ることがあります。それには、歯が動いているときに感じる痛みや装置に付随する痛みなど様々な原因によって起こり得ます。
中には「調整した初日から数日間は痛みがあってつらい」「痛みがピークの時は痛み止めを飲んで乗り切っている」という人もいます。
この記事では、インビザラインの治療中にみられる痛みやその対処法について解説します。
この記事を読むことで、インビザライン矯正中の痛みの原因や仕組みなどを理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。
こんな疑問を解決!
- インビザライン矯正中に痛くなるのはどんなとき?
- インビザラインで痛みがでるのはなぜか?
- インビザライン矯正の痛みはいつまで続く?
- インビザライン矯正で痛みがある時の対処法は?
インビザラインで歯が痛い原因
インビザライン矯正中に歯に痛みが出る原因には、どのようなものがあるのでしょうか
マウスピースが破損している時
インビザラインで使用するマウスピースが破損していると、破損した断面などが歯肉や粘膜、舌などに当たり、痛いことがあります。
マウスピースがしっかりと装着されていない時
マウスピースがしっかり装着されていないと、マウスピースが浮いた状態になってしまいます。そうなると歯に適切な矯正力がかかることなく、本来必要でないところに矯正力がかかることもあるため、痛みが生じることがあります。
最初のマウスピース装着時
初めてマウスピースを装着すると、矯正力が歯にかかります。歯がすごく締め付けられるような感じも出ますが、時に痛みとして感じる人もいます。
マウスピースを久しぶりに装着した時
マウスピースを久しぶりに装着すると、マウスピースをつけていない間に歯が少し動いてしまい、適合がきつくなり痛みを生じることがあります。
矯正用のアンカースクリューを付与した時
短い期間で歯を動かすために、矯正用のアンカースクリューを固定源として利用するために臼歯部の歯肉に埋入します。インビザライン治療でもマウスピースと並行して行われることがあります。埋入直後は痛みを感じることがあります。
アタッチメントを付与した時
インビザライン治療において、適切な矯正力をかけるため、または補助するためにアタッチメントというコンポジットレジンで築造された突起を歯面に付与することがあります。これにより、口唇や頬粘膜が擦れて痛みが出ることがあります。
また、アタッチメントの付与により矯正力が増し、歯にも負担がかかるため、歯が疼痛を覚える人もいます。
IPR(interproximal reduction)をした時
IPRとは別名、隣接面接合とも言われます。
歯牙を並べるためのスペースを確保するため、歯の大きさを整えるため、隣接面のエナメル質を0.2㎜から0.5㎜削ります。通常エナメル質に限局して削るので、疼痛が出ることはありませんが、中には知覚過敏様の症状が出てしまう人がいます。
インビザラインで歯が痛くなる仕組み
粘膜や歯肉にマウスピースが当たって痛い場合は、物理的な刺激によって傷ができることによる痛みですが、インビザライン治療での痛みの多くが歯に矯正力がかかることによって生じる痛みです。
ある大きさ以上の矯正力を歯に作用させると、歯の周囲に存在する歯槽骨に骨改造が生じて、歯は力の作用方向へ移動します。力の作用方向に対応する歯根膜は圧迫され、歯槽骨は吸収されます。
一方で、力の作用方向と反対の歯根膜は牽引され、歯槽骨の骨形成を生じます。圧迫された側では血流障害や充血帯ができ、炎症も起きます。この結果、圧迫側では炎症性のサイトカイン(細胞間の情報伝達に関与するタンパク質)等の発痛物質が集まり、疼痛が引き起こされます。
インビザライン矯正による歯の痛みはいつまで続くのか?
インビザライン矯正での痛みは、歯を動かすときに生じる痛みです。
歯を動かすとき、動かす方向の骨が溶かされますが、骨が溶けるときに痛みの元となる発痛物質が分泌されます。痛みを感じるのはこのためです。
発痛物質の分泌は、歯を動かし始めて数時間で始まります。そして、24〜48時間ほどで痛みのピークを迎えますので、痛みのピークもこのあたりになります。その後は、発痛物質の分泌が減り、1週間ほどで治まります。
インビザラインで歯が痛い時の対処法
まずは痛み止めなどの鎮痛剤の服用や、硬いものを摂取しないようにすることが大切です。歯を動かす力がかかると、歯根膜に負担がかかるため、そこに硬いものの刺激が加わると痛む場合があるからです。
様子を見て、それでも良くならない場合や、痛みが強い場合は、インビザライン治療が原因の痛みではなく、一般的な歯科疾患による痛みの可能性もあるので、すぐにかかりつけの歯科医院を受診しましょう。
症例別の対処法は以下の通りです。
マウスピースが破損しているため痛みを感じる時
マウスピースが破損している場合は、速やかにかかりつけの歯科医院を受診してください。場合によってはマウスピースの再作製となり、費用が発生する可能性があります。
マウスピースがしっかりと装着されておらず、痛みを感じる時
基本的にはチューイーというマウスピースをしっかり装着させるための材料を咬むと適切に装着されます。およそ5分間くらい咬むことが目安です。 チューイーは消耗品のため、へたってきたら交換となります。
最初のマウスピース装着時や久しぶりにマウスピースを装着した時の痛み
通常は一週間ほどで締め付け感や痛みは消失しますが、中には症状が長引き、鎮痛剤を服用しないと耐えられない場合もあります。
我慢できない場合は、すぐにかかりつけの歯科医院を受診しましょう。
矯正用のアンカースクリューを付与した後の痛み
数日は鎮痛剤を服用して様子を見てもらいますが、スクリュー周囲に炎症が起きている場合は抗生物質の服用が必要になる場合もあります。
アタッチメントを付与により擦り傷ができた場合
口唇や頬粘膜に擦り傷ができた場合は、傷口を塗り薬やレーザー等で対応します。
IPRにより歯がしみる場合
知覚過敏用の薬を塗布し、症状の緩和をはかります。また、フッ素塗布で対応する場合もあります。
【まとめ】インビザラインで歯が痛い原因と対処法
インビザライン矯正で歯が痛む原因と痛みが出た時の対処法を解説しました。
この記事では、下記のようなことが理解できたのではないでしょうか。
ここがポイント!
- インビザライン矯正中に痛みが出る原因としては、「マウスピースが破損してふちが歯茎や口唇などに当たる時」「マウスピースの装着が甘く不要な矯正力がかかった時」「マウスピース装着や交換した初日」「アンカースクリュー埋入直後」「アタッチメントで傷ができた時や顎間ゴムの付け替えなどをした時」「IPRで歯を削ることで知覚過敏様の症状が出た時」などがある
- 痛みが出る仕組みとしては、抜歯やスクリュー、装置による傷が原因で起こるものや、矯正力によって歯が動いている時に歯槽骨の吸収や形成に伴い炎症性の発痛物質が発生することが挙げられる
- インビザラインの痛みの原因となる発痛物質は、歯が動いているおよそ24~48時間をピークに1週間ほどで治まることがほとんどである
- 痛みがある時の対処法は「破損したら速やかに歯科医院を受診する」「適切にマウスピースを着脱するためにチューイーを使用する」「マウスピース装着初日や痛みが長引く時は痛み止めを服用する」「スクリュー付与時は鎮痛剤や必要に応じて抗生物質を服用する」「口唇や頬粘膜の擦り傷などは塗り薬やレーザー等で対応する」「IPRによる痛みは知覚過敏用の薬やフッ素塗布などで対応する」などがある
痛みが少ないといわれるインビザラインですが、個々のケースにより痛いと感じることはしばしば起こりえます。治療上、歯や骨に負荷をかける必要があるため、何らかの理由で痛みが起こることはある意味避けられないでしょう。
永久的に続く痛みではないものの、痛みそのものは不快なものであり、その原因や対処法を知っておかなければ治療への不安を感じるのは当然です。
中には、矯正治療以外の原因で痛みが発生しているケースや速やかに対処しなければならないケースもあります。
東京歯並び矯正歯科では、フォロー体制にも力を入れていますので、もし不安を感じる時や痛みが長引く場合にはすぐにご相談ください。