歯列矯正で歯の動きを早めるコルチコトミーとは?

歯列矯正は歯並び整え、見た目が綺麗になる治療で需要もありますが、治療期間がかかることが最大のデメリットです。場合によっては数年間かかることもあります。
治療期間を短くする方法はいくつかありますが、その中でもコルチコトミーは有用な方法です。コルチコトミーは外科的な処置が必要なため、体への負担はありますが、その対価として歯に矯正力をかけた時の動きが早くなります。
コルチコトミーはどういった方法で行われるのでしょうか。
目次
コルチコトミーの原理
コルチコトミーは歯槽骨(歯を支える骨)の表層の皮質骨を一部除去し、海綿骨に傷をつけることによって、骨の創傷治癒を促します。この状態で外から矯正力をかけていくと、従来よりも早く歯を動かすことが可能になります。
また、一度創傷治癒が働いた骨はより硬く、安定したものとなるため、矯正治療後の後戻り(歯並びが崩れてしまう)も防ぐことができます。
コルチコトミーの実際
コルチコトミーは外科的な手術になります。
コルチコトミーは頬側、舌側を問わずワイヤー矯正を併用するため、まずはワイヤー矯正に使用するワイヤーを固定するためのブラケットを適切な歯に装着します。
次に麻酔をして、コルチコトミーを施す部分の歯肉にメスを入れて歯肉弁とも呼ばれるフラップを作ります。
エンジン等を使用して表層の皮質骨の一部を慎重に除去し、中の海綿骨に傷をつけます。フラップを元の位置に戻し、糸で縫合していきます。縫合が終了したら、最後にワイヤーをブラケットで固定して終了となります。
コルチコトミーの手術は長時間になることも少なくないため、必要な場合は通常の浸潤麻酔だけでなく、静脈内鎮静法(全身麻酔ではないが、緊張を抑え、リラックスして手術が受けられるよう点滴を施す)が併用されることもあります。
コルチコトミーのメリット
コルチコトミーには、次のメリットがあります。
矯正期間を短縮できる
通常、矯正治療は数年間に及ぶ治療期間になることも少なくありませんが、コルチコトミーを行うことによって、症例によっては数か月まで短縮することが可能です。
結婚式を控えている場合や、様々な事情で矯正治療を長期間受けることができない方に有用な方法と言えます。
動かしにくい歯が動くようになる
歯は骨の中に入っており、骨が硬い人や骨が厚い人は一般に矯正力をかけても動きにくいとされています。また、歯根が長い歯に矯正力をかけても動きにくいとされています。
このような歯の場合、コルチコトミーを行うことによって、矯正力をかけた時に歯が格段に動きやすくなります。また、矯正力をかけたことによる歯根吸収も少ないのが特徴です。
矯正治療後の後戻りが少ない
コルチコトミーを行った歯を支える骨は、創傷治癒が働いているため、従来の骨よりも硬く、安定したものとなっています。よって矯正治療後の後戻りする可能性が低くなります。
抜歯矯正が非抜歯矯正になることもある
コルチコトミーは歯を大きく動かすことも可能なため、従来の矯正では抜歯が必要な症例も、非抜歯で矯正を行うことができるようになる症例もあります。もちろん、全ての抜歯症例が非抜歯症例になるわけではありません。
コルチコトミーのメリットとデメリット
コルチコトミーには、次のデメリットがあります。
外科的な手術が必要である
コルチコトミーは外科的な処置となります。基礎疾患がある方や恐怖心が強い方は注意が必要です。
担当の歯科医師とよく相談し、リスクがメリットを上回る場合は、他の方法を選択することもあります。
歯肉退縮が起こることがある
コルチコトミーはフラップを形成するため、手術後歯肉が治癒する過程で歯肉が退縮することがあります。
歯肉が退縮すると、見た目の問題だけでなく歯がしみるという知覚過敏の症状が出る場合もあります。
全ての歯科医院でコルチコトミーを受けることができない
コルチコトミーは、非常に高度な技術が必要な処置です。そのため、全ての歯科医院で受けることができるというわけではありません。
コルチコトミーを矯正治療と併用して受けたいと考えている場合は、矯正歯科で相談するか、ホームページ等でコルチコトミーを行っている歯科医院を検索して受診することをお勧めします。
コルチコトミーの費用
通常の矯正治療と同様に、コルチコトミーも全額自費治療となります。自費治療なため、歯科医院によって値段設定は様々ですが、場合によっては100万円以上かかる場合もあります。
同じ費用でも、術式やアフターフォローが異なることがあります。また、ワイヤー矯正などの矯正治療自体の費用も含めた費用なのかも事前に確認が必要です。
【まとめ】歯列矯正で歯の動きを早めるコルチコトミーとは?
コルチコトミーは骨の再生力を利用して、歯の動きをよくする方法です。
歯列矯正の治療期間を短くするといったメリットのある治療法ですが、外科的な処置が必要なためリスクもあります。
費用も通常の歯列矯正にかかる費用よりもプラスしてかかるため、利点欠点をよく考慮した上で選択することをお勧めします。
結婚式までに早く歯を並べて綺麗にしたいなど、治療期間が長くなることが難しい場合に有効な治療法です。