歯の矯正後の後戻りの原因・予防・対処法

歯の矯正後の後戻りは、矯正治療終了後に必ずついてまわる問題です。
矯正治療後にせっかく整った歯並びが、また悪い歯並びに戻ってしまうことを後戻りと言います。矯正治療終了後に生涯に渡って完全に後戻りを防ぐことは難しいですが、後戻りをなるべく防ぐ方法はあります。
このコラムでは、歯の矯正後の後戻りの原因、その予防や対処について解説いたします。
目次
後戻りの原因
矯正治療終了後に綺麗に並んだ歯並びが一生続くかというと、必ずしもそうではありません。たとえ矯正治療をしていなかったとしても、歯は何らかの外的要因によって動くことがあります。
舌を歯で押したりする癖や頬杖、指しゃぶりと言った体癖や食いしばり、歯ぎしりなどのTCHは、綺麗な歯並びを壊す原因ともなります。また虫歯や歯周病による、歯や歯を支える骨の喪失、矯正治療が終了したばかりの歯並びは、完全に歯が骨に固定されていないため、後戻りの原因となります。
後戻りを防ぐための保定とは?
矯正治療後の後戻りを防ぎ、目的の位置に移動させた歯を保持安定させることを保定と言います。そして、保定のために使用する装置を保定装置と言います。
この保定装置の選択やどのくらいの期間保定装置を使用するかなどの指示は、歯科医師からされます。保定装置をしっかりと指示通り装着しないと、後戻りの可能性が高くなるため、保定は矯正治療の一部と考えることが大切です。
保定装置の種類
矯正後の歯列を固定するための保定装置には、いくつかの種類があります。
マウスピースタイプ
着脱可能で透明なマウスピースタイプの保定装置です。
着脱可能なため、日々の歯のお手入れはしやすくなります。また透明な保定装置のため、見た目の問題も比較的起こしにくいです。
欠点はプラスチック製のため、強度が弱いことです。使用していると穴が空き、完全に破折してしまうこともあります。特に歯ぎしりや食いしばりをする方は注意が必要です。簡単に修理できない場合は再作製となります。
プレートタイプ
着脱可能な装置で、歯の頬側にはワイヤーが、内側にはプラスチックの材料が覆う形になります。
歯ぎしりや食いしばりをしても、歯の咬合面は材料に覆われていないため、プレートタイプの保定装置はマウスピースタイプに比べて壊れにくいです。歯の頬側をワイヤーが通るため、見た目の問題は出ますが、修理はマウスピースタイプに比べれば容易です。
固定式タイプ
ほとんどの場合、下顎の前歯の内側に細いワイヤーを当てて、接着剤で固定します。
固定式のため、清掃性は悪いです。保定装置の周りに歯石も沈着しやすいため、定期的な歯石除去も必要になります。歯の頬側はワイヤーが見えないため、見た目の問題が出ることはありません。
インビザライン矯正における保定
インビザライン矯正後の保定には、専用の保定装置であるビベラリテーナーというものを使用します。
ビベラリテーナーの最大の特徴は、インビザライン矯正で使用した最終マウスピースに合わせて作製されるため、基本的には通常のマウスピースタイプの保定装置に必要な型取りが必要ありません。もちろん新たに型取りをして作製することも可能です。
ビベラリテーナーは1度作製すると3セット提供され、数か月毎に交換して使用します。
インビザライン矯正後に欠かせない保定装置「ビベラリテーナー」と他のリテーナーとの違い
保定装置の取り扱いについて
固定式タイプの保定装置は洗浄することができないため、長く清潔に使用するには、毎日よく磨く事しかできません。
マウスピースタイプやプレートタイプは着脱可能なため、口腔内は綺麗に清掃することは可能ですが、保定装置の取り扱いに注意が必要です。
まず紛失に注意が必要です。着脱可能であるということは、口腔内に保定装置がない間はどこかに保管しなければなりません。保管する専用のケースを用意し、必ず保定装置を外したら専用ケースの中に入れる癖をつけるとよいです。
また保定装置の清掃は、少なくても2、3日に1回は専用の洗浄剤で洗うと、長く清潔に使用することができます。お湯で洗浄すると、装置に使用されているプラスチックが変形することがあるので、必ず水で洗浄するようにします。
保定期間について
保定期間については個人差があり、一概に期間がこのくらいという表現をすることは難しいです。
矯正治療終了後、少なくとも半年は歯が後戻りをしやすい期間です。これは理想の歯並びに移動した歯を支える骨が、まだ十分に固まっていないからです。よって最低でも半年は保定装置を使用した方が無難です。
しかし、現実的には客観的に後戻りしやすいということを全て論証することは難しく、数年は保定装置を入れてくださいと歯科医師から指示されることも多いです。
後戻りが起きてしまったら
後戻りが起きてしまいその歯並びが気になる場合は、再度矯正治療という形になります。
インビザライン矯正の場合、契約内容にもよりますが、一番標準的なインビザライン・フルというプランで治療した場合は、5年間は何度もマウスピースの型取りができます。
例えば、インビザライン矯正が2年間で終了したとして、2年後に後戻りしたからという理由で再度インビザライン矯正を受けたいという場合も、再治療が可能です。
その他の矯正治療の場合も、矯正の後戻りに対して保証期間を定めている歯科医院もあります。自分が矯正治療を受ける前に、後戻りした場合の対応について確認しておくことをお勧めします。
【まとめ】歯の矯正後の後戻りの原因・予防・対処法
矯正後に起きる歯列の後戻りの原因や、それを防ぐための保定の考え方や保定装置の種類について解説いたしました。
矯正治療終了後の後戻りを防ぐために保定は必須です。むしろ、保定まで含めて矯正治療と考える方が自然です。
歯並びが綺麗に整ったら、早速保定装置を考えるべきです。もし仮に後戻りが起きてしまったら、再矯正するか否か、かかりつけの歯科医師とよく相談することが大切です。