埋伏歯とは?歯が生えてこない原因・症状とその治療法も解説
あなたは自分のお口の中に何本の歯が生えているのかをご存知ですか?
個人差はあるものの、人間の歯は乳歯列期を経て、初めての永久歯が生える6歳ごろから徐々に永久歯に生え変わっていきます。
永久歯の本数は通常28本で、親知らずまですべて生え揃えば、全部で36本となります。
歯科検診や治療の際に初めて歯が足りないことを知る方もおられ、ご自身ではすべての歯がきちんと生え揃っていると思っていても、実はお口の中にはまだ生えてきていない「埋伏歯」があるかもしれません。
すべての埋伏歯に治療が必要というわけではありませんが、中には放置しておくことで大きな問題に発展する可能性があるケースもあります。
では、埋伏歯はなぜ起きてしまうのでしょうか?また、埋伏歯があることがわかった時にどのような治療が選択されるのでしょうか。
この記事では、埋伏歯について解説します。
この記事を読むことで、埋伏歯がどのようにして生じ、どのような治療方法があるのか、また放置するとどのようなリスクがあるのかなどを理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。
こんな疑問を解決!
- 埋伏歯とはどのような症状なのか?
- なんで埋伏歯になるの?
- 埋伏歯の治療はどんなことをするの?
- 埋伏歯を放置するとどんなリスクがある?
- 埋伏歯の治療はいつ受けるべき?
埋伏歯とは
埋伏歯とは、本来乳歯から永久歯へと生え変わる時期に、歯が歯肉や顎骨に埋まっていて萌出しない(生えない)状態です。
基本的に痛みがあることは少ないですが、歯肉直下にある場合には、指や舌で触ると、硬組織をふれることがあります。
ご自身で歯数が足りないと気づく場合の他、歯科健診や歯科治療の際にレントゲンを撮影することで偶然判明することがあります。
埋伏歯になる原因
埋伏歯になってしまう原因には以下のようなものが考えられます。
- 顎骨が小さい
- 歯の幅径が大きく歯が萌出するスペースがない
- 歯胚(分化して歯になる組織)の位置不良
- アンキローシス(骨性癒着)
- その他原因不明のもの
アンキローシスとは、本来、歯と顎骨の間に存在する歯周組織がないため、歯と顎骨が直接結合した状態です。歯と顎骨が硬組織同士で結合しているため、歯の移動が期待できません。
埋伏歯の治療方法
具体的に、埋伏歯の治療方法についてご紹介いたします。
埋伏歯は、痛みを含め症状がない場合もあるため、まずは治療の必要性があるか否かの精査が必要です。
まずは、全顎的に歯数が足りているか、埋伏歯があるかを確認します。
1枚のフィルム上に、歯列と歯周組織、顎骨など、お顔全体の撮影ができるパノラマレントゲン写真を撮影することが多いです。
次に、埋伏歯がある場合には、歯の向きが順性であるか、上下逆さまの逆性であるかなど、萌出の方向についても確認します。
次に、埋伏歯の存在を確認した場合の治療方法をご説明いたします。
経過観察
画像診断結果から、自然萌出が期待できる場合は、経過観察を行い、歯が自然に生えてくるのを待ちます。経過観察期間は、患者様のお口の状態によってそれぞれ異なります。3〜6か月に1度レントゲン撮影し、位置を再確認します。
晩期残存乳歯の抜歯
乳歯は、歯根吸収といって歯の根っこが溶けて吸収されることで、自然脱落していきます。
しかし、乳歯の脱落がうまくいかずに、口腔内に残存している場合、後続の永久歯の萌出を妨げることがあります。この場合には、乳歯を抜歯することで、埋伏歯の萌出を導くことが必要です。
開窓術
先行の乳歯が、う蝕(むし歯)や外傷によって早期に喪失した場合には、歯肉が線維化し硬くなり、後続の永久歯が萌出できないことがあります。その場合には、開窓術が行われます。小手術の一種ですが、10分程度で終了する手術です。局所麻酔を行い、歯肉を切開し、永久歯の歯冠を明示し、自然萌出を待ちます。
牽引
乳歯の抜歯や、開窓などを行っても、自然に歯が萌出してこないことがあります。その場合には、矯正力を用いて歯槽骨から牽引します。
牽引できる埋伏歯は、歯冠の一部が口腔内に明示できていることが必要です。そのため、歯肉直下に埋まっている場合には、開窓により、歯肉を切開し、歯冠の一部を明示します。
明示した埋伏歯と隣在歯に、ブラケットとワイヤー、スプリングを接着し、持続的な力を付与し歯を引っ張り出します。
抜歯
一部の埋伏歯は、萌出よりも抜歯が選択されることがあります。
1つは、埋伏過剰歯と呼ばれる、正常の歯数よりも多い歯の場合です。
もう1つは、水平埋伏智歯です。智歯(親知らず)がまっすぐに生えないため、直前にある第二大臼歯を横から押すような向きで生えています。特に半埋伏とよばれる半分歯肉に埋まった状態の智歯は、清掃不良になることが多く、う蝕や、歯周病、智歯周囲炎のリスクがあります。口腔衛生状態の向上のためにも抜歯が適応となる症例です。
埋伏歯を放置するリスク
現在、痛みがない完全埋伏歯であっても、埋伏歯の歯軸の方向に向かって、歯列を押すため、歯列不正の原因になることがあります。歯列矯正の治療前には、埋伏歯を抜歯することが一般的です。
また、前述の通り半埋伏の智歯は、清掃不良が起こりやすく、う蝕や歯肉炎のリスクがあります。歯肉に半分埋伏した歯は、歯肉縁下にう蝕が広がりやすく処置が困難です。
半埋伏の智歯周囲歯肉に炎症が起こる智歯周囲炎は、再発を繰り返すことが多く、炎症が強い場合には、飲み込む際に強い痛みを生じる嚥下痛が発生することがあります。
埋伏歯の治療は何歳まで?
埋伏歯の治療は、矯正治療同様に何歳になっても治療自体を受けることは可能です。しかし、年齢が上がるにつれて、骨と歯根が癒着していることが多く、埋伏歯の抜歯は難しくなります。
特に、水平埋伏智歯のように、顎骨内に横向きに生えていた歯を抜歯すると、一時的に顎骨内に空洞ができます。通常、骨組織に置き換わっていきますが、加齢により、骨の回復が遅くなると、骨が薄くなることがあるので、若いうちに治療を行うことがお勧めです。
同様に、加齢により骨と歯根が癒着している場合には、牽引や、開窓による治療も、効果が期待できないことがあります。
埋伏歯の治療については、早い段階で相談することがお勧めです。
【まとめ】埋伏歯とは?歯が生えてこない原因・症状とその治療法も解説
埋伏歯について、原因や治療法について解説しました。
この記事では、下記のようなことが分かったのではないでしょうか。
ここがポイント!
- 埋伏歯とは歯肉や顎骨に埋まっていて生えてこない歯のことで、一部分が歯肉に埋まったまま生えてこない半埋伏歯もある
- 埋伏歯の原因はさまざまで、顎骨の小ささや歯の大きさ、歯胚の位置不足、顎骨との癒着がある
- 埋伏歯の治療方法には経過観察、抜歯、開窓術、牽引などがある
- 埋伏歯を放置すると、歯列不正や清掃不良によるう蝕や歯肉の炎症を起こす原因となることがある
- 埋伏歯の治療は何歳でも可能だが、年齢が上がるほど抜歯の難易度が上がったり、回復に時間がかかったりするため早めに対応しておくとよい
全ての埋伏歯に治療が必要というわけではありませんが、目に見えない部分で他の歯にも影響を及ぼす可能性もあります。
埋伏歯についてご不安がある方は、東京歯並び矯正歯科へご相談ください。
当院では、レントゲン撮影での画像診断などしっかり検査をしたのち、治療が必要な埋伏歯なのかも含めて、最適な治療法をご提案させていただきます。