歯の矯正で行うセファロ分析とは?
矯正治療を行う場合には、さまざまな検査によって詳細に分析する必要があります。主な検査には、口腔内写真や模型の作成、さらにレントゲン撮影による画像診断があります。
レントゲンにはいくつかの種類があり、特に矯正治療では口の周囲全体を撮影するパノラマ写真のほか頭部全体を撮影するセファロ写真(頭部X線規格写真)による分析が必須とされています。
長期にわたる矯正治療には不安を感じている人も少なくありませんが、「セファロ分析のお陰で納得できる治療法を提案してもらえた」「セファロ分析してもらえる矯正専門医だと安心」という声も聞かれます。
この記事では、セファロ分析の方法や特徴などについて解説します。
この記事を読むことで、セファロ分析の概要や矯正治療に必要な理由を理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。
こんな疑問を解決!
- セファロ写真とセファロ分析にはどんな方法があるの?
- セファロ分析の利点と欠点とは?
- セファロ分析によってわかることとは?
- マウスピース矯正ではどんな風に使われるの?
目次
セファロ写真とセファロ分析
セファロ写真は、1931年にホーリー・ブロードベントによって開発された、矯正治療に必要なX線写真です。
X線が放出される管球と、頭部及びフィルムまでの距離を一定に保つことで、世界中どこで撮影しても同じように撮影できるように規格化されています。
撮影方向は、頭部の正面を後方から前方へ向けて撮影する方法と、頭部の側面から撮影する方法の2種類があり、前者は下顎骨の偏位や正中線の偏位、咬合平面のずれなどを分析し、後者は上下顎骨の前後的な位置関係や前歯部の歯軸のチェック、第一大臼歯の咬合関係をはじめとする顎顔面の評価をします。
撮影する際には、まず頭部の固定を行います。頭部の固定にはイヤーロッドという、両耳で頭部を固定させる器具を使用します。地面とフランクフルト平面(眼窩下縁と外耳道上縁を結ぶ直線)が平行になるように頭部を固定します。
側面を撮影する場合は、頭部の正中矢状平面とフィルムを平行にします。そして、エックス線管球から正中矢状平面までの距離は150㎝、正中矢状平面からフィルムまでの距離は15㎝として設定し、出来上がるレントゲン写真は実際のサイズの1.1倍となります。
セファロ写真を撮影した後は、セファロ分析に移ります。
セファロ写真には重要な解剖学的な計測点が何点もあります。この計測点を利用した多くの分析法が存在しますが、代表的なのはDowns法、Northwestern法、Tweed法です。
Downs法
フランクフルト平面を基準として、骨格的な評価と歯の分析との2つに分けて評価する分析法です。
Northwestern法
Downs法と同じく、骨格的な評価と歯の分析との2つに分けて評価する分析法ですが、基準平面がSN平面(鼻前頭縫合部の最前点と蝶形骨トルコ鞍の壺状陰影像の中心点を結んだ直線)です。
Tweed法
フランクフルト平面、下顎中切歯歯軸、下顎下縁平面の3つの直線を引くことによってできる三角形の内角を元に分析する方法です。
セファロ写真分析の利点欠点
利点は世界中どこであっても定量的な計測が可能であり、規格写真であるため、平均との比較が容易であることです。また分析法が確立しているため、セファロ撮影後の分析も容易にできます。
欠点としては、セファロ写真上に様々な解剖学的な硬組織が重なって撮影されるため、その詳細が不明瞭になることがあります。これによって正確な診断ができない可能性もあり、また軟組織は透過像になるため、詳細を把握することが難しいです。
そして、さらなる欠点としては撮影することによって被曝するということですが、最近のレントゲン写真はデジタル化されているため、デジタルレントゲン写真は従来のレントゲン写真と比べておよそ10分の1以下の放射線量で撮影することが可能です。
セファロ写真及び分析は、人の頭頸部が左右対称として撮影分析されるため、本来左右対称ではない人間の頭頸部の分析をするには無理があると言っても過言ではありません。
最新のセファロ分析はCTによる3Dのセファロ分析です。これによって本来左右非対称の頭頸部をさらに詳細に分析することが可能です。
セファロ分析で何がわかるのか
具体的な例を挙げると、例えば出っ歯が主訴の患者さんの場合、その原因が上顎骨の過成長で出っ歯になっている場合、下顎骨の劣成長で出っ歯になっている(上顎は問題ない)場合、顎骨は問題ないが、上顎前歯部が唇側傾斜して出っ歯になっている場合の3つがあります。
視診でもちろん判断できるところもありますが、やはりレントゲン写真を撮影して原因を診断することには勝てません。原因がしっかりと診断できないと、間違った治療方針を提示することになり、治療がうまくいかなくなってしまいます。
セファロ分析を行うことによって正確な不正咬合の診断を下し、治療方針が立ちやすくなります。また規格写真なので顎や頭頸部の成長発育を分析したり、セファロ写真を治療前の写真と治療後の写真を重ね合わせることによって、歯牙がどのように移動したかを比較することが可能です。これによって治療結果を評価することができます。
マウスピース矯正への応用
マウスピース矯正では、患者さんの治療計画を立案する際にセファロ写真撮影する必要が必ずしもありません。正確に述べると、治療計画を立案する処方箋にセファロ写真を添付することができますが、あくまで参考資料程度として処理されます。
よってマウスピース矯正を始める際にセファロ写真の撮影、及びセファロ分析を行わずに開始することができます。
確かにセファロ写真の撮影及び分析を行わないでマウスピース治療が可能な症例はたくさん存在しますが、中にはセファロ分析の結果、マウスピース治療には向かないことが判明する症例も存在します。
よってマウスピース治療を始める際は、診断の際にセファロ写真の撮影及び分析を行ってくれる歯科医院を受診することをお勧めします。
【まとめ】歯の矯正で行うセファロ分析とは?
セファロ分析の方法や特徴などについて解説しました。
この記事では、下記のようなことが理解できたのではないでしょうか。
ここがポイント!
- セファロはイヤーロッドで頭部を固定し世界共通の一定規格の下で行われるレントゲン撮影法で、その写真により解剖学的な計測点を使った詳細なセファロ分析が可能となる
- 代表的な分析法は以下の3つ
・Downs法:フランクフルト平面を基準に骨格的評価と歯の分析を分けて評価する
・Northwestern法:SN平面を基準に骨格的評価と歯の分析を分けて評価する
・Tweed法:フランクフルト平面、下顎中切歯歯軸、下顎下縁平面からなる三角形の内角を分析する - セファロ分析は世界共通の規格写真のため、平均との比較が容易で分析法も確立しているというメリットがあるが、デメリットとしては硬組織や軟組織の診断が難しいケースがあることやレントゲン被爆も挙げられるものの、最近ではデジタル化され、被ばく量が10分の1以下に減少し詳細な分析も可能となった
- セファロ分析により出っ歯などの不正咬合を正確に診断し治療方針を立てられるだけでなく、規格写真という最大の強みによって治療結果の精密な評価ができる
- マウスピース矯正ではセファロ分析が必ずしも必要ではないとされているが、中にはセファロ分析によってマウスピースが不適応と判明することもあるため、セファロ撮影及び分析を行う歯科医院が推奨される
矯正治療では、従来セファロ分析が必須とされてきました。
セファロ分析では、模型やパノラマ撮影などでは判明しない歯列不正のタイプを骨格的に分析することができます。また、世界共通の規格であることから平均値と実測値を比較することができるので、ズレを詳細に把握して治療計画に反映することが可能となります。
ただし、セファロ撮影装置を設置している歯科医院はそれほど多くないのが現状です。通常矯正治療には必須の撮影法であるため、矯正専門医なら導入しているところがほとんどですが、マウスピース矯正では必須ではないことから受診の際にはセファロ撮影と分析が可能か確認することをお勧めします。
東京歯並び矯正歯科では、セファロ撮影と分析により矯正医が診断を行っています。最良の治療計画に基づいた矯正治療を受けるためにも、セファロ撮影が可能な信頼できる歯科医院を選ぶことが大切です。