セラミック矯正で後悔と失敗をしないための予備知識

矯正治療というと、装置を使用しての治療を思い浮かべる人が多いですが、装置を使用しない矯正治療も可能な場合があります。
セラミック矯正はその中のひとつで、歯列不正の歯に対して被せ物をすることによって、歯並びを改善するという方法です。
セラミック矯正はどのような場合に適応で、どのようなことを注意しなければならないのでしょうか。
セラミック矯正とは
セラミック矯正とは、セラミックの被せ物をすることによって歯の形を変え、歯並び治すという治療です。
従来の歯科用のセラミックは、脆弱であったため、セラミックを破折させないためにメタルを下地にし、その上にセラミックを貼り付けるメタルボンドというものが主流でした。
メタルボンドはとても良い材料ではありますが、金属を下地にしているため、天然歯に比べて透明感がないのが欠点でした。しかし、近年使用される歯科用セラミックは、セラミック単独でも強度があり、かつ透明感が強い商品が多く出てきています。
これらの最新のセラミックを使用したセラミック矯正は、患者さんにとっては歯並びを整えるだけでなく、歯の色も自分の好みに選択できるため、人気の治療となっています。
セラミック矯正の適応範囲は?
セラミック矯正は、全ての歯列不正に適応というわけではありません。
基本的には、前歯部や臼歯部の軽度の叢生(凸凹の歯並び)、及び軽度の歯性(骨格的な問題のない)の上下顎前突となります。骨格性に問題のある歯列不正や重度の叢生、全顎的な歯列不正は適応外となります。
自分の歯並びが適応か否かは、セラミック矯正を扱っている歯科医院で一度相談することをお勧めします。
セラミック矯正のメリット
通常矯正治療というと、矯正装置を使用した数年にわたる長期治療になりますが、セラミック矯正の場合は歯に被せ物をすることによって終了すため、早ければ数週間で終了することができます。
よって、矯正装置の装着に抵抗がある方や結婚式などを控え、治療完了希望日までの時間がない方にはおすすめです。また、近年ではCAD/CAMシステム(小さいデジタルカメラで歯の型取りをし、3Dプリンターでセラミックの被せ物を作製可能なシステム)を使用すれば、即日で治療を終えることも可能です。
CAD/CAMシステムは、全ての歯科医院に装備されているわけではないので、CAD/CAMシステムでの即日治療を希望する場合は、セラミック矯正を扱っている医院であっても事前に確認すると良いでしょう。
セラミック矯正のリスク
セラミック矯正は前述の通り、適応範囲が限られています。十分な診断がなされないままセラミック矯正が行われてしまうと、無理な咬み合わせになり、セラミックが割れたり、顎関節症を引き起こすこともあります。
セラミック矯正で治療する場合は、十分にセラミック矯正の経験がある歯科医院で施術を受けると良いでしょう。また、セラミックは材料であり、現在日本の健康保険制度では認められていない材料となります。つまり、セラミック矯正は必ず自由診療となります。自由診療は、歯科医院ごとに価格の設定やどのようなセラミックを使用するかも選択することが可能です。中には、安価な治療で脆弱なセラミックを使用している歯科医院も存在するので注意が必要です。
セラミック矯正で失敗と後悔をしないために
セラミック矯正で一番後悔されることは、歯を削るということです。これは被せ物をしなければならないため、歯を丸く削らなければならないということです。
歯を削ると虫歯や歯周病になりやすくなります。また、歯に被せ物をする際に歯の軸を変えることによって、被せ物の形の自由度を増すために便宜的に神経を取ることがあります。
歯は神経を失うことによって弱くなり、歯が折れるリスクが上がります。さらに神経が残存している歯にセラミックを被せた後、痛みやしみる症状が続く場合は、セラミックを被せた後に神経を取る必要があります。この場合、一度被せたセラミックを除去してから神経の治療を行う必要があるため、もう一度セラミックを被せる必要があります。こういった場合の保証等も治療前に確認しておくことが大切です。
セラミックは材料であるために必ず劣化します。
自然歯にも言えることですが、高額な費用をかけて治療した歯でも、一生持つわけではありません。もちろん、定期検診やメンテナンスを受けることによって、被せたセラミックを長持ちさせることは可能です。セラミック単体や歯科用接着剤などの劣化により、いずれは再治療が必要であるということは、頭に入れておく必要があります。
逆を言えば、定期検診やメンテナンスがセラミック歯を長持ちさせる秘訣でもあります。
【まとめ】セラミック矯正で後悔と失敗をしないための予備知識
セラミック矯正は、被せ物によって歯列不正を改善する治療方法です。
その適応は限られており、前歯部の軽度の叢生や軽度の正中離開などです。
骨格的な歯列不正や重度の叢生では、適応にはなりません。また、セラミック矯正は健康な歯を削るため、歯を削るリスク、特に歯の神経を便宜的に取らなければならない可能性も理解する必要があります。
セラミック矯正をやりたいと考えている場合は、セラミック矯正の実績が豊富な歯科医師が在籍する審美歯科でよく相談することをお勧めします。