八重歯のインビザライン矯正による治療のポイントと注意点
八重歯は海外では「悪魔の歯」などと言われていますが、日本では「かわいい」という見方もあるようです。ただ、専門的な視点からいうならば、八重歯にはほとんどメリットはないと言っても過言ではないでしょう。
「噛んだ時に歯に違和感がある」「八重歯の間に虫歯ができてしまった」というケースがしばしばみられ、八重歯の重なりや噛み合わせが原因となって他の歯にも大きなストレスやリスクを与えることがわかっています。
この記事では、マウスピース矯正の中でもインビザラインで八重歯を矯正するための方法や注意点などについて解説します。
この記事を読むことで、八重歯に対するインビザライン矯正(マウスピース矯正)の特徴を理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。
こんな疑問を解決!
- そもそも八重歯とはどのような状態の歯なのか
- 八重歯になると、どのようなトラブルが起こるのか
- インビザライン矯正による八重歯の治療の可否
- 八重歯に対するインビザライン矯正で併用される抜歯などの4つの方法
- インビザライン矯正開始後に治療が困難と判断された場合の注意点
目次
八重歯とは
八重歯とは、糸切り歯(犬歯)が歯列弓の中に入るスペースが足りないために、歯列の外側に転移した状態のことで、隣の歯と重なるように並んだ歯列不正である叢生のひとつです。
八重歯は日本人の感覚では、若く可愛らしく見えるとの理由で八重歯を肯定する意見も存在します。しかし、八重歯は顔の印象が変わるだけでなく、歯の健康面での問題も引き起こします。
八重歯になるとどうなるか
八重歯になると歯並びが悪くなるため、咬合に影響が出ます。特に犬歯は顎の側方運動に強く関与するため、犬歯が外側に転移した状態になると他の歯に側方圧がかかり、咬合性外傷(歯に余計な力がかかり、歯が打撲状態になること)を引き起こす可能性があります。
また、転移によって歯が重なり合うため、他の歯よりもプラークが溜まりやすく、虫歯や歯周病に罹患しやすいです。自分で清掃することも困難になります。
インビザライン矯正で八重歯が治療可能か?
八重歯を矯正治療で治療するためには、八重歯を元の歯列に組み込むためのスペースが必要になります。
インビザライン矯正では、従来のワイヤー矯正で行うような抜歯矯正にも対応しているため、多くの八重歯の症例に対して有効です。しかし、八重歯の症例の中でも骨格性に問題がある場合、他の不正咬合も併発している場合、患者の協力が得られない場合(インビザライン矯正は取り外し可能な装置を装着するため)などには適応が難しいです。
インビザライン矯正で八重歯を実際に治療する
インビザライン矯正で八重歯を歯列に組み込むためのスペースを作るために、以下の方法をとります。
抜歯
抜歯することによってスペースを作ります。
他の多くのマウスピース矯正では抜歯矯正は適応外でしたが、インビザライン矯正では抜歯矯正も適応になります。
ちなみに抜歯によって強制的にスペースを作ることができますが、抜歯をして矯正治療を行うと歯列弓の大きさが小さくなり、舌根が後ろに下がります。これにより将来的にいびきをかきやすく、睡眠時無呼吸症候群を引き起こすリスクがあります。
抜歯は第1小臼歯、及び第2小臼歯が選択される場合が多いです。この2つの歯は形が似ているので、抜歯したとしても、見た目の問題がそれほど出ません。
インビザラインで抜歯は必要?適応症例とタイミングについても解説
ディスキング(IPR)
歯の表層を少し切削して、スペースを作ることをディスキングと言います。
歯の表層はエナメル質で出来ているので、コンマ数㎜切削してもほとんど問題はありません。仮に全ての歯をディスキングすると、おおよそ歯1本分のスペースを作ることができます。
しかし、歯を切削することに抵抗がある方はこの方法を選択することが難しくなります。
臼歯の後方移動
臼歯部を後方に移動することによって、スペースを作ります。しかし、最後方臼歯の後ろに歯を動かせるだけのスペースや骨が存在しなければ、後方移動は難しくなります。
日本人の場合、顎が小さいため第3大臼歯(親知らず)が横に生えている場合も多いです。インビザライン矯正によって臼歯の後方移動を予定している場合は、事前に横向きに生えている親知らずを基本的に抜歯することになります。
歯列の側方拡大
歯列弓を側方に拡大することによって、スペースを作ることができます。
成長期の子供であれば側方に拡大することはそれほど難しくありませんが、大人の場合は側方拡大する量に限界はあります。よって多くスペースを作らなければならない場合は、適応外となることもあります。
また対合歯との咬合関係も考慮して側方拡大しなければならないため、側方拡大したことによって咬合関係が崩れる場合は適応外となります。
インビザライン矯正で八重歯を治療する際の注意点
歯を大きく動かす重度の八重歯を矯正する場合、マウスピース矯正では難しいとされていました。しかし、矯正治療の経験豊富な歯科医師であれば、対応できる症例も多くなってきています。ただ、それでもインビザライン矯正で全ての八重歯が矯正できるわけではありません。
最初からインザライン矯正での治療が難しいと診断された場合は問題ありませんが、インビザライン矯正で治療を開始した後、歯の動きが悪い等の理由でインビザライン矯正だけではこれ以上歯を動かすのが難しい場合があります。この場合は従来のワイヤー矯正を併用することがあります。
特に八重歯を治療する際は歯を動かす量が多くなることが多いので、通常の不正咬合をインビザライン矯正で治療するよりも、ワイヤー矯正を併用する可能性が少し高くなります。
【まとめ】八重歯のインビザライン矯正のポイントと注意点
インビザラインによる八重歯の矯正について解説いたしました。
この記事では、下記のようなことが理解できたのではないでしょうか。
ここがポイント!
- 八重歯とは、歯列の外側に転移して隣の歯と重なるように並び、歯列不正となった犬歯のことをいう
- 八重歯は咬合性外傷や虫歯、歯周病など、健康上の問題となりやすい
- インビザライン矯正は、抜歯などにより多くの八重歯矯正に有効だが、骨格の問題や複雑な歯列不正、患者が協力しないケースには適応されない
- 歯列のスペース確保の方法として、抜歯や非抜歯のディスキング、臼歯の後方移動、歯列の側方拡大を併用する必要がある
- インビザライン矯正治療開始後でも、歯の移動が困難と判断される場合、ワイヤー矯正を併用することがある
従来のマウスピース矯正では、八重歯の矯正治療は困難と言われていましたが、インビザラインで治療可能なケースが増えています。
ワイヤー矯正にはなかった治療中の審美的なストレスも少ないため、これまで二の足を踏んでいた人たちが、より気軽に矯正治療を受けられるようになりました。また、八重歯の治療に必要な歯列のスペース確保の方法として、抜歯や非抜歯による方法がありその選択肢も増えました。
東京歯並び矯正歯科では、女性の歯科医師が丁寧にお話を伺い、治療方針を一緒に決めていきます。患者様によって治療方法も十人十色、もっとも治療効果が高く希望に近い治療方法を一緒に考え、ご提案しますので安心してご相談ください。