不正咬合の原因と症状とは?正しい噛み合わせにするための矯正治療も解説
歯並びは、単に審美的によくない、笑顔や口元に自信が持てない、という問題以外にも、人の基本的な活動ともいえる咀嚼や発音などにも影響を与えます。また、咬合の不調によって、顎関節症をはじめ肩こりや姿勢の歪みなど身体全体にも悪影響を及ぼすことがわかっています。
「噛み合わせが悪く長年頭痛や肩こりに悩まされている」「歯並びが悪いのが気になってつい口元を隠してしまう」など、噛み合わせに由来する悩みを抱えている人は少なくありません。
この記事では、歯並びが悪い状態である不正咬合について解説します。
この記事を読むことで、不正咬合の具体的な特徴や治療法などを理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。
こんな疑問を解決!
- 不正咬合とは?
- 不正咬合にはどんな種類があるの?
- 不正咬合で起こる症状を教えて!
- なぜ不正咬合になるの?
- 不正咬合の治療はいつから?
- どんな治療法があるの?
目次
不正咬合とは
咬合とは、上下の歯が接触した状態のことです。正常な状態は、上下の正中(真ん中)が一致し、すべての歯がバランスよく上下で接触している状態です。
反対に不正咬合とは、簡単に説明すると、歯並びのズレにより、一部噛んでいない歯、機能していない歯がある状態です。
不正咬合の場合には、見た目の問題の他に一部の歯に過重負担になるケースや、歯列に隙間ができることなどで構音が不明瞭になるケースなど、機能的な問題が想定されます。
不正咬合の種類
不正咬合は、歯列や咬合の状態によって下記の内容に分類されます。
実際は、それぞれの患者様のお口の状態は、“上顎前突と叢生”など複数の症状が重なった場合も多く見受けられます。
叢生(そうせい)
歯と歯が重なり合ったり、捻じれて生えているため、歯並びが凸凹して見えます。一般的に乱杭歯やガチャ歯と呼ばれる状態です。かわいらしさの象徴とも言われる八重歯(上顎犬歯の唇側転移)も、叢生の一種です。
空隙歯列(くうげきしれつ)
空隙歯列とは、歯と歯のあいだに隙間がわずかに空いた状態です。いわゆる、すきっ歯と呼ばれる状態です。歯列の問題の他に、矮小歯や先天欠如(生まれつき歯が足りない)場合に起こりやすい症状です。
正中離開(せいちゅうりかい)
正中離開とは、中切歯(前歯)の真ん中に歯間離開がある状態です。小さな隙間ですが、顔の正中にあるため、目立ち、口元が幼く見えるなど、対面する人に印象が残りやすい歯列不正の一種です。
上顎前突(じょうがくぜんとつ)
いわゆる出っ歯の状態です。上顎が前方に突き出ているため、側貌が凸型になります。前歯など歯の傾斜が原因の歯性上顎前突と、上顎の顎骨が過成長の他、下顎が劣成長や後位に位置しているなど、骨格性上顎前突に分けられます。
下顎前突(かがくぜんとつ)
いわゆる受け口、しゃくれと呼ばれる状態です。本来は上顎よりも後方に位置している下顎が前方に位置しているため、下顎が突き出したような状態になっています。上唇に比べて、下唇が前方に位置しています。
反対咬合(はんたいこうごう)
歯を咬み合わせた場合、正常な咬合では、上の歯が下の歯に1〜2㎜とわずかに覆いかぶさるように重なっています。
反対咬合では、下顎の歯列弓(歯が並ぶカーブ)が大きいなどの理由により、正常の咬合と反対、すなわち上下が逆になっています。
過蓋咬合(かがいこうごう)
噛み合わせが深いとも言われる過蓋咬合とは、奥歯を咬みあわせた場合に、正面から見た際に下の歯がほとんど見えない状態です。
交叉咬合(こうさこうごう)
交叉咬合は、シザーバイト、クロスバイト、すれ違い咬合など、様々な呼び方があります。上下の歯が横にずれることにより、すれ違い咬み合わない状態です。
開咬
特に前歯において起こりやすい症状ですが、開咬は隣り合う数本の歯が上下で咬み合わさっていない状態です。舌を突出する癖などで起こります。オープンバイトとも呼ばれます。
不正咬合の症状とは
では、不正咬合がある場合、どのような症状や影響があるのでしょうか?
見た目や機能面からいくつかの症状をご紹介します。
見た目
不正咬合でまず目につきやすいのは、見た目の問題です。
上顎前突や下顎前突、歯間離開など対面した位置にいる相手からは、口元にインパクトがあるように見えてしまいます。本人にとっては、コンプレックスになりかねません。
お口ポカン
子供によく使われる表現ですが、日常的にお口がポカンと開いた状態です。
集中して作業をしている際や、反対にリラックスしている際に、口が開いたままの状態です。
咬めない
不正咬合により、噛み合わせに問題があると、効率的に咀嚼ができません。そのため、食事に時間がかかる、飲み込みにくい、消化不良を起こしやすいなど、摂食嚥下にも悪い影響を及ぼします。
発音が不明瞭
歯並びは、構音、発音にも影響を及ぼします。
歯と歯の隙間から空気が漏れてしまい、発音が聞き取りにくい、唾液が飛びやすいといったコミュニケーションにもマイナスな要素となります。
口呼吸
口呼吸は、感染症の予防の面からも避けた方がよいといわれています。
慢性的な口呼吸により、アデノイドと呼ばれるリンパの集合が肥大することや、口腔乾燥を引き起こし口臭やう蝕(齲蝕)、歯周病のリスクが増加します。
不正咬合の原因とは
様々な症状を引き起こす不正咬合は、いくつかの原因が分かっています。
日常生活から治していけるものもいくつかありますので、意識的に習癖を改善するようにしましょう。
遺伝
骨格や歯の大きさは遺伝による影響を受けやすいです。
口呼吸
習慣的な口呼吸により、口輪筋の弛緩やアデノイドの肥大が起こり、鼻呼吸がしづらくなることがあります。意識的に口呼吸を改善するように調整しましょう。
悪習癖
舌の突出癖や、爪かじり、唇かみなど、幼い子以外にも、悪習癖がある場合があります。緊張すると唇を噛んでしまう、爪をかじってしまうといった認識がある場合には注意しましょう。
う蝕、歯周病などの口腔疾患
う蝕や歯周病により、歯を喪失すると、傾斜や挺出といって歯が移動し咬み合わせに悪影響を及ぼします。
生活習慣
過度の食いしばりや頬杖など、歯列に過重負担がかかることでも、不正咬合の原因になります。
不正咬合治療の開始時期
不正咬合治療は、気づいた時に早めに行うことが鉄則です。
もちろん、子供の頃から行うことは理想的ですが、大人も諦めることはありません。
小児矯正
小児矯正は、2つのフェーズに分けることができます。
一期治療
乳歯から永久歯への生えかわりが起こる混合歯列期に行う歯列矯正です。
6歳から12歳前後を想定しています。お子様の成長する力を使って、骨格的な位置関係や、大きさを正しい位置へと導きます。
二期治療
永久歯(第2大臼歯)が生え揃い、乳歯の脱落が完了した段階で行う治療方法です。
一期治療が骨格的なバランスを理想に導くことに重きを置くのに対して、2期ではより美しく、機能的に歯が並ぶように治療を行います。
成人矯正
成人矯正は、小児矯正と異なり顎の成長する力を利用することができません。しかし、歯列に力を付加することで、歯の移動を行い理想的な歯並びへと導くことが可能です。治療開始に際し、年齢制限はありません。
不正咬合の治療法
治療方法は、これまで多くの実績があるワイヤー矯正の他、インビザラインに代表されるマウスピースを装着するタイプの歯列矯正が増えてきています。
ワイヤー矯正
歯にブラケットと呼ばれるボタン状の装置を接着し、ワイヤーと結紮することで力を付与しています。幅広い症例に対応可能な実績のある治療方法です。
マウスピース矯正
ワイヤー矯正と比べて、ご自身で装置の取り外しができること、歯列矯正中であることが目立たないといったメリットがあります。
治療の対象となる症例がワイヤー矯正と比べると限られています。
【まとめ】不正咬合の原因と症状とは?正しい噛み合わせにするための矯正治療も解説
歯並びが悪い状態である不正咬合について解説しました。 この記事では、下記のようなことが理解できたのではないでしょうか。ここがポイント!
- 不正咬合は歯並びのズレによって、一部噛んでいない歯や機能していない歯がある状態で、見た目や一部の歯の過重負担、構音障害など、機能的な問題を起こすことがある
- 不正咬合には以下のような種類があり複数の症状が重なったケースもある
・叢生:乱杭歯やガチャ歯といわれ、重なったり捻じれたりして歯並びが凸凹に見える状態
・空隙歯列:すきっ歯とも呼ばれ歯間に隙間が開いた状態で、矮小歯や先天欠如が原因で起こりやすい
・正中離開:中切歯の真ん中に離開(小さな隙間)がある状態で、目立ちやすく印象に残りやすい
・上顎前突:出っ歯ともいわれ、上顎が前方に突き出て側貌が凸型になった状態で、歯性上顎前突と骨格性上顎前突に分けられる
・下顎前突:受け口やしゃくれと呼ばれ、上顎より下顎が突き出した状態
・反対咬合:下顎の歯列弓が大きいため正常な咬合と反対になり、下の歯が上の歯に覆いかぶさっている状態
・過蓋咬合:噛み合わせが深く、奥歯が咬合した時に正面から見ると下の歯がほとんど見えない状態
・交叉咬合:シザーバイト、クロスバイト、すれ違い咬合などと呼ばれ、上下の歯が横にずれてすれ違い噛み合わない状態
・開咬:オープンバイトと呼ばれ、隣り合う数本の歯が上下で噛み合わない状態で前歯に多く、舌を突出する癖などで起こる - 不正咬合の症状は以下の通り
・見た目:口元にインパクトがあるため、本人のコンプレックスになりかねない
・お口ポカン:日常的に口が開いたままの状態
・噛めない:咀嚼が効率よくできないため、摂食嚥下に悪影響を及ぼす
・発音が不明瞭:空気が漏れて発音が聞き取りにくく、唾液の飛散などコミュニケーションにもマイナスとなる
・口呼吸:アデノイドの肥大や口腔乾燥による口臭やう蝕、歯周病のリスクが増加する - 不正咬合の原因は以下の通り
・遺伝:遺伝の影響からくる骨格や歯の大きさ
・口呼吸:口輪筋の弛緩やアデノイドの肥大による鼻呼吸の障害
・悪習慣:舌の突出癖、爪かじり、唇かみなど
・う蝕、歯周病などの口腔疾患:う蝕や歯周病による歯の喪失からくる歯の移動
・生活習慣:過度の食いしばりや頬杖などによる歯列への過重負担 - 小児と大人の不正咬合治療の開始時期は以下の通り
・小児矯正(一期治療):混合歯列期(6~12歳前後)/成長する力を使って骨格の位置や大きさを正しい位置に導く
・小児矯正(二期治療):永久歯期(第2大臼歯が生えそろった時期)/より美しく機能的に並べる治療を行う
・成人矯正:治療開始に年齢制限はなく、歯列に負荷をかけて歯を移動し理想的な歯並びを目指せる - 不正咬合の治療法は以下の通り
・ワイヤー矯正:歯にボタン状のブラケットを装着し、ワイヤーで結紮して力を付与する治療で、幅広い症例に対応できる。
・マウスピース矯正:取り外しができて目立たないというメリットがあるが治療対象がワイヤー矯正より限られる
噛み合わせの異常である不正咬合が与える、さまざまな影響について説明しました。
不正咬合には代表的な種類があり、これらが複合して起こることもしばしばです。そのため、歯並びの治し方も実際の状態に適した方法を選択することが重要です。
また、歯並びを改善するためには、矯正治療の進み具合に合わせた適切かつ緻密な調整を行うことも必須であり、専門的なスキルと実績を持つ専門医に治療してもらうことも成功のポイントといえるでしょう。
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