捻転歯(ねじれ歯)の原因と矯正治療
捻転歯は、歯の軸が正常な状態から回転してねじれたように生えている状態で、「ねじれ歯」と呼ばれることもあります。隣接する歯とずれてしまうので段差ができて清掃もしづらく、虫歯や歯周病のリスクが高くなります。
「前歯が片方だけ変な方向を向いていて目立って気になる」「歯ブラシがしづらくて虫歯が心配」といった悩みの原因が捻転歯であることもしばしばです。捻転歯は上下の前歯や小臼歯によく見られ、特に中切歯などでは審美的にも問題となりがちです。
では、この捻転歯はなぜ起きてしまうのでしょうか?また治すにはどのような方法があるのでしょうか?
この記事では、捻転歯の原因や治療法について解説します。
この記事を読むことで、捻転歯の基礎知識や対応方法を理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。
こんな疑問を解決!
- 捻転歯ってどんな歯?
- なぜ捻転歯になるの?
- 捻転歯になったらどんなことが心配?
- 捻転歯の治療にはどんな方法があるの?
目次
捻転歯とは
歯がねじれて萌出してしまうことを捻転歯と言います。歯自体に変形はありません。
捻転歯は上下顎の前歯部に特に多く、その他臼歯部で発生することもありますが、前歯部ほど頻度は多くないです。ねじれの度合いも捻転歯によって差があり、歯によっては180°ねじれている場合もあります。
捻転歯になる原因
捻転歯になる原因には、次のものがあります。
歯が萌出するスペースが足りない
歯の萌出するスペースが足りない、すなわち顎骨の成長が悪いと、歯は萌出するスペースを求めて本来萌出するべき位置とはズレて萌出してきます。これによって捻転歯が発生する場合があります。
乳歯が大きな虫歯になってしまった場合
乳歯が大きな虫歯になってしまうと、乳歯の根の先端に膿が溜まってしまう可能性があります。後続永久歯はこの膿を避けて萌出しようとするため、捻転歯が発生する場合があります。
乳歯が長く残存してしまった場合
乳歯の根吸収が本来のペースでうまく進まなかったり、乳歯が骨と癒着してしまったりした時、乳歯が通常よりも長く残存します。
この場合、後続永久歯が乳歯を避けて萌出してこようとするため、捻転歯が発生する場合があります。
過剰歯が存在している
人間の歯は親知らずも合わせると、上下左右で32本存在します。しかし、中にはそれ以上の歯が存在することもあります。それが過剰歯です。
過剰歯が存在すると歯の萌出が阻害され、歯が本来萌出する位置とは別の場所に萌出してくることがあります。この際、捻転歯が発生する場合があります。
遺伝的(先天的)な問題
歯の卵である歯胚(歯の卵)が生じた段階でねじれている場合もあります。この場合は後天的(生まれた後に生じること)な問題がなかったとしても、捻転歯として萌出してきます。
親知らずが歯を押している
親知らずが萌出するスペースが不足していると、臼歯部から前歯部にかけて親知らずの萌出力である横向きの力が、臼歯部から前歯部にかかります。これによって捻転歯が発生する場合があります。
捻転歯になるとどうなるか
では捻転歯をそのままにしていると、どのような症状が現れてくるのでしょうか。
歯並びが悪くなる
捻転歯があると左右の歯列のバランスが崩れるため、歯並びが悪くなります。
捻転すると隣接する歯との間にスペースができます。そのスペースに隣接する歯が傾斜、または移動してくるので歯並びが悪くなります。よって審美的な障害が出ます。
虫歯や歯周病になりやすい
歯のねじれ方にもよりますが、歯が捻転すると清掃がしづらくなります。少なくとも毎日糸ようじを必ず通すようにしないと、プラークや歯石が沈着しやすくなり、虫歯や歯周病が発生しやすいです。
他の歯に負担がかかる
特に前歯に捻転歯が存在する場合、食事時に前歯でうまく咬みきれない場合があります。その場合、臼歯部に負担がかかるため、臼歯部の咬合性外傷や歯冠破折、歯根破折を引き起こす可能性があります。
捻転歯の治療
捻転歯の治療は基本的には矯正治療が適応となります。また矯正治療以外の方法もご紹介します。
マウスピース矯正
インビザライン等のマウスピース矯正で捻転歯を治療することは可能ですが、重度の捻転歯の場合は適応外となることもあります。
また、混合歯列期(乳歯と永久歯が混在している歯列)にインビザライン・ファーストを利用すれば歯列の幅が狭い為に捻転歯になりそうな後続永久歯に対して、スペースを付与して捻転歯を防ぐことができる可能性があります。
ワイヤー矯正
従来のワイヤー矯正によって、捻転歯は治療することが可能です。
すでに捻転歯として萌出した永久歯が対応になります。ただし、180°近く捻転している歯をワイヤー矯正で治療するのは困難な場合が多いです。歯の捻転度合いによっては、舌側にワイヤーを固定した舌側矯正で治療した方が良い場合もあります。
床矯正
乳歯列期または混合歯列期にパノラマレントゲン等で顎骨の成長が悪く、歯列が狭く捻転歯が生じることが予想される場合は床矯正も有効です。
床矯正は入れ歯のような可綴式(取り外し可能)の装置で、成長期の歯列不正に適応の装置です。
抜歯
すでに捻転歯として萌出した歯牙が対象となります。歯列の内側や外側に転位して、抜歯しても咬合及び審美性に問題がない場合、抜歯適応になることもあります。
補綴治療
捻転歯を補綴(被せ物)治療により改善する方法です。補綴することで正常な歯冠形態を付与することができます。
歯を削らなければならないことや、生活歯(神経が生きている歯)の場合は便宜的に神経を取らなければならない可能性といったデメリットもあります。
【まとめ】捻転歯(ねじれ歯)の原因と矯正治療
捻転歯の原因や治療法について解説しました。
この記事では、下記のようなことが理解できたのではないでしょうか。
ここがポイント!
- 捻転歯とは歯自体に変形はないものの、ねじれて萌出した状態の歯で、上下前歯部に特に多く180°ねじれている場合もある
- 捻転歯になる原因は以下の通り
・顎骨の成長に対して歯の萌出するスペースが不足している
・乳歯が重度の虫歯で根尖に膿が溜まり、永久歯がそれを避けて萌出したため
・何らかの原因で乳歯が長く残存し、永久歯がそれを避けて萌出したため
・過剰歯があり、本来と別な場所に萌出したため
・先天的に歯胚の時期にねじれた状態となり、そのまま萌出したため
・親知らずの萌出する力で横向きに押されたため - 捻転歯にみられるリスクは以下の通り
・左右の歯列のバランスが崩れて歯並びが悪くなり、審美的な障害が出る
・清掃がしづらくなりプラークや歯石が沈着し、虫歯や歯周病になりやすい
・前歯の捻転歯は咬合がうまくできず、臼歯部に負担がかかりやすくなる - 捻転歯の治療法は以下の通り
・マウスピース矯正:通常の治療や子供の捻転歯予防にも有効だが、重度の場合は適応外になることがある
・ワイヤー矯正:萌出後の永久歯に適応だが、困難なケースや舌側矯正が有効なケースもある
・床矯正:乳歯列期や混合歯列期で顎骨の成長不足や歯列が狭いケースに有効
・抜歯:既に萌出後で咬合や審美性に問題がない場合に適応になることがある
・補綴(被せ物):形態を正常な形に改善する方法だが、歯を削ることや神経を取る可能性などのデメリットがある
捻転歯は清掃性や審美性などの問題から、将来的にさまざまなリスクを伴う歯です。
捻転歯になる原因をみると先天的なものや後天的なものがあり、先天的な捻転歯の場合は、定期的に管理をしながら早期から対応することをお勧めします。後天的な捻転歯の対策としては、まず虫歯が進行しないように注意しておくことが必要です。
歯列の幅が狭く捻転歯になることが予測される場合には、早めに専門医を受診して矯正治療を開始することも検討すべきでしょう。捻転の度合いによっては矯正治療が複雑になることもありますので、歯が萌出する向きに異常を感じたら早めに専門医に相談することも重要なポイントです。
特に豊富な実績があり信頼できる専門医により、適切な検査と診断を受けることは、治療を成功させる大きな条件のひとつです。
東京歯並び矯正歯科では、詳細な検査を基に捻転歯を含む歯列不正に対して最適な治療を提案しています。歯の異常などでお悩みの方は、まずは医師の診察と相談にお越しください。