インビザラインで歯が動く仕組み
マウスピース型の矯正装置を用いるインビザラインは、従来のワイヤー矯正とは異なり金属を使用しないことから審美性に優れ、また患者さん自身で取り外しできる可綴式のため、清掃性が良いのが特徴です。
もちろん、歯に力をかけて動かすという点では、インビザラインとワイヤー矯正で違いはありません。
ただ、治療を検討する際には、インビザラインだけにみられる特徴があることも知っておくべきでしょう。
この記事では、インビザラインで歯が動く仕組みや特徴などを解説します。
この記事を読むことで、矯正治療で歯が動くメカニズムやインビザラインならではの特徴、インビザラインの補助装置が果たす役割などを理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。
こんな疑問を解決!
- 矯正治療で歯が移動する仕組み
- インビザラインで歯が移動する仕組みと特徴
- インビザラインで用いられる補助装置の役割
矯正治療で歯が動く仕組み
矯正治療による歯の移動は、機械的な刺激に対する歯周組織(歯を支える組織)の反応です。歯周組織の中でも歯根膜が重要な役割を担っています。
歯根膜とは歯と歯槽骨(歯を支える骨)をつなぐ一層の膜のことです。歯根膜は繊維性の結合組織で構成されており、繊維芽細胞(コラーゲンやヒアルロン酸を作り出す細胞)、骨芽細胞(骨を作る細胞)、破骨細胞(古い骨を吸収することで骨の代謝を促進する細胞)、セメント芽細胞(セメント質を作る細胞)といった間葉系細胞(細胞分裂する能力が高く、様々な細胞に分化する細胞)が多く含まれており、これらの細胞が歯に矯正力がかかった際に関与します。
歯は歯槽骨の中に入っており、歯にある一定の力がかかると、歯が歯槽骨に圧迫される側と牽引される側ができます。
圧迫された側は歯根膜も圧迫され、血流障害が生じ、貧血帯や充血帯ができます。特に充血帯では血管の透過性が増し、破骨細胞が集積します。この破骨細胞によって骨吸収が促進され、歯根膜繊維を再形成、再配列しながら歯が動いていきます。
牽引される側では歯根膜が徐々に拡大し、歯根と歯槽骨をつなぐ歯根膜繊維は牽引された状態となります。牽引された繊維の間にある血管の血液が亢進し、歯根膜に存在する間葉系細胞が新たな骨やセメント質、歯根膜を形成します。
このように歯に一定の力がかかると、歯周組織の吸収と形成を繰り返しながら歯は移動していきます。
一般的な装置で歯を移動できる量は1か月で1㎜前後です。早く動かしたいからといって強い矯正力をかけると、歯根吸収を起こしたり、歯槽骨にもダメージを与えてしまうことがあります。
インビザラインで歯が動く仕組み
インビザラインで歯が動く仕組みは、通常のワイヤー矯正と原理は同じですが、力のかけ方が少し異なります。
インビザラインの矯正システムでは、口腔内の歯列のデーターを専用のソフトで分析及び解析し、理想の歯列をゴールとして設定します。
現状の歯列から理想の歯列に向かって、マウスピースを数個から数十個製作し、1週間から2週間程度でどんどん新しいマウスピースに交換していきます。各々のマウスピースには現状の歯列より少し理想の歯列に近い形になっており、その差によって歯に力がかかります。
インビザラインはSmartTrack素材という特殊な強化プラスチックを使用しています。持続的に弱い力をかけて歯を移動させることが可能です。また歯の形状やアタッチメントとマウスピースとの間を密着させるため、歯の移動量の調整がしやすいです。これにより、従来のワイヤー矯正でみられた歯根吸収のリスクがほとんどありません。
インビザラインの補助装置で歯が動く仕組み
インビザラインでは、歯を効率的に動かすために、補助装置を用いることがあります。
アタッチメント
アタッチメントとは、インビザライン治療中に歯面に付与される歯と同色の突起物です。
材質はコンポジットレジンでできており、役割は歯軸や角度を調整して、理想的な歯列への移動を補助します。
アタッチメントは、テンプレートという無色透明な装置を使用して歯面に付与します。このテンプレートによって付与されたアタッチメントの形と、マウスピース内面のアタッチメントに対応する部分の形が少し異なるため、これにより矯正力がかかります。
顎間ゴム
インビザラインでの治療中に、補助的に力をかけるために、上の歯と下の歯にゴムをかけることがあります。これにより、出っ歯や受け口、左右の横ずれを改善させます。
すなわちゴムの弾性力を利用し、歯を目的の位置に移動させ、しっかりとした咬合を確立させます。
Ⅱ級ゴム
主に上顎前突(出っ歯)の症例に使用します。
上顎の犬歯と下顎の第一大臼歯にゴムをかけ、上顎が後方へ、下顎は前方へ引っ張られます。
Ⅲ級ゴム
主に反対咬合(受け口)の症例に使用します。下顎の犬歯と上顎の第一大臼歯にゴムをかけ、上顎が前方へ、下顎が後方へ引っ張られます。
クロスゴム
クロスバイトやシザーズバイトといった、歯列が左右にずれている症例に使用します。
上顎と下顎の同じ歯の頬側、舌側または口蓋側にゴムをかけることによって矯正力がかかります。
垂直ゴム
上顎と下顎の歯が接触していない、開咬の症例に使用されます。
上顎と下顎の同じ歯の頬側にゴムをかけ、上下の歯を互いに垂直的に引っ張ることで矯正力をかけます。
【まとめ】インビザラインで歯が動く仕組み
インビザラインで歯が移動する仕組みや補助装置の役割などを解説しました。
この記事では、下記のようなことが分かったのではないでしょうか。
ここがポイント!
- 矯正治療では、歯に一定の力をかけることで歯周組織の吸収と形成を促し、歯を移動させる
- インビザライン矯正では1~2週間程度で新しいマウスピースに交換していき、持続的に弱い力をかけることで歯を移動、理想の歯列に近づけていく
- インビザラインは歯の移動量を調節しやすいため、ワイヤー矯正で生じやすい歯根吸収のリスクがほとんどない
- アタッチメントは歯面に付与する突起物で、歯軸や角度を調整して理想的な歯列への移動を補助する
- 顎間ゴムは、上下の歯にかけて補助的に力をかけるためのもので、出っ歯や受け口、左右の横ずれを改善し、歯を目的の位置に移動させる
インビザラインで歯が動く仕組みは、基本的にワイヤー矯正と同じです。
ただ、インビザラインはワイヤー矯正に比べて歯根吸収が起こりにくく、また、アタッチメントや顎間ゴムを利用して歯に補助的に力をかけていくといった点に違いがあります。
矯正治療を検討する際には、これらの違いも加味したうえでご自身に合う治療法を選ぶようにしましょう。
東京歯並び矯正歯科では、歯科医師が直接診察の中で治療についての説明をさせていただいております。インビザライン矯正について、疑問やご不安などがありましたら、遠慮なくご相談ください。