ダイレクトボンディングとは
虫歯、すなわち齲蝕で歯質の一部を欠損した歯の修復法のひとつに、ダイレクトボンディングがあります。
ダイレクトボンディングとは、コンポジットレジンとよばれる歯の色調に合わせた色合いのプラスチック製の歯科材料を使った齲蝕治療法です。
歯にコンポジットレジン自身が直接(ダイレクト)接着する(ボンディング)ため、このように呼ばれています。
ダイレクトボンディング以外の治療法では、歯科材料が歯に直に接着することはなく、セメントとよばれる接着材料を利用して接着します。
ダイレクトボンディングはこんな方におすすめ
- 齲蝕が小さな方
- 忙しくて通院しにくい方
- 奥歯でも天然の歯のように白く自然な見た目に仕上げたい方
- 金属アレルギーのある方
- 歯を削る量を最小限にとどめたい方
- 前歯の隙間(すきっ歯)が少し空いてしまっている方
- 前歯の形状を整えたい方
ダイレクトボンディングのメリット
ダイレクトボンディングによる治療法のメリットの多くは、治療に用いられるコンポジットレジンの有する特性によって獲得されています。
目立ちにくい
ダイレクトボンディングで用いられるコンポジットレジンには、着色剤が配合されています。
歯の色に近似した着色剤を使うことで、コンポジットレジンの色調を歯の白さに合わせることができます。そのためダイレクトボンディングによる修復治療は、天然歯のような自然な仕上がりを再現します。
歯の削除量を抑えられる
全部被覆冠なら支台歯の全周を形成しなければなりません。また、小ぶりの詰め物であるインレーでも、健全な歯質を削って、インレーが外れないように保持形態や維持形態を付与しなければなりません。したがって、どちらも歯の削除量は必然的に多くなります。
ダイレクトボンディングなら、窩洞部分のみの削除で済むので、歯の削除量を抑えられます。
一日で治療が終わる
ダイレクトボンディングでは、齲蝕の部分を形成したら、その部分に直接コンポジットレジンを詰めて治療を終えることができます。
全部鋳造冠やインレーなど技工作業が必要な治療法は、歯型をとって作った歯の石膏模型を利用して製作しますので、一日では治療は終わりません。
ダイレクトボンディングなら直接詰めるので、治療が一日で終わります。
金属アレルギーがあっても問題ない
ダイレクトボンディングで使われるコンポジットレジンという素材は、プラスチック系の歯科材料です。金属成分は一切配合されていませんので、歯科治療用の金属にアレルギー反応を示す方も安心して治療をお受けいただけます。
費用を抑えられる
クラウンやインレーなどの治療法と比べると、ダイレクトボンディングは複雑な技工操作が必要ない上、高価な金属材料やセラミック材料も使いませんので、治療費を抑えられます。
ダイレクトボンディングのデメリット
比較的低侵襲のダイレクトボンディングによる治療法にも、デメリットがあります。不明な点は治療前の歯科医師との診察・相談にてお尋ねください。
大きな齲蝕には適応できない
歯の神経、すなわち歯髄にまで達するような深い齲蝕の治療は、根管治療を行ったのち、全部鋳造冠などによる補綴治療を行わなくてはなりません。
このように、大きな齲蝕の治療にはダイレクトボンディングは適応外となります。
咬合圧が加わる箇所には適さない
ダイレクトボンディングで用いられるコンポジットレジンは、強度があまり高くありません。
咬合圧とよばれる、上下の歯を噛み合わせたときに発生する力が加わる部分の齲蝕治療に用いると、咬合圧に耐えられず、欠けたり割れたりするリスクがあります。
難易度が高い
ダイレクトボンディングを直接法、歯型をとって鋳造冠などを作る治療法を間接法といいますが、間接法は口腔外であらゆる方向から視界を確保した上で製作できます。
一方、直接法であるダイレクトボンディングは、口腔内の限られた視野、術野で治療しなければなりません。
技工操作は関節法の方が複雑ですが、直接法の方が治療の技術的難易度は高くなります。
古くなると表面が荒れてくる
コンポジットレジンの主成分はマトリックスレジンとフィラーという粉末成分です。
時間の経過とともに、咬耗や摩耗によってフィラーが少しずつ脱落していきます。その結果、表面が粗造になり、プラークが付着しやすくなります。
ダイレクトボンディングの適応
空隙歯列・正中離開(すきっ歯)
歯の欠け
虫歯
ダイレクトボンディングの流れ
ダイレクトボンディングによる治療期間は、基本的には1日で完了します。
01
診察・相談
問診により、齲蝕による自覚症状の有無や治療方法の希望、そして、既往歴やアレルギーの有無などを確認します。
02
口腔内検査と診断
齲蝕の状態、歯を支えている歯周組織の状態などを視診や触診により確認します。レントゲン写真も撮影し、齲蝕の深度も検査します。こららの資料を踏まえ、ダイレクトボンディングの適応を診断します。
03
窩洞形成
虫歯の穴である齲窩を開拡し、感染歯質を除去します。窩壁や窩縁、窩角の形態が適切になるように、窩洞を形成します。
04
シェードテイキング
窩洞形成後の残存歯質の色調を確認し、充填するコンポジットレジンの色調を決定します。
05
歯面処理
コンポジットレジンを歯質に接着するために、歯面にエッチングおよびボンディング処理を行い、脱灰とレジン成分を浸透させます。
06
充填と光照射
コンポジットレジンを窩洞に充填し、適切な形態に形成します。形成後、専用の光照射器を使って、コンポジットレジンを重合させ、硬化させます。
07
仕上げ研磨
硬化したのち、コンポジットレジンを咬合調整と形態修正をかねて仕上げ研磨します。窩縁外にはみ出したコンポジットレジンも、除去します。
ダイレクトボンディングの料金・費用
メニュー名 | 本数・回数・内容 | 価格 |
---|---|---|
コンポジットレジン | 1個所 | 40,700円 |
コンポジットレジン オムニクロマ | 1個所 | 70,400円 |
ダイレクトボンディングのよくある質問
ダイレクトボンディングは保険適用されますか?
保険診療で使うことを認められたコンポジットレジンを使ったダイレクトボンディングなら、保険診療の対象となります。
同じコンポジットレジンでも、審美性を重視したタイプの中には保険診療での承認を受けていないものがあります。
ダイレクトボンディングの寿命はどのくらいでしょうか?
コンポジットレジンは、マトリックスレジンにフィラーという粉末成分を組み合わせて作られています。時間が経つと、水分を吸収して変色したり、表面から少しずつフィラーが取れて表面が荒れたりしてきます。
個人差だけでなく、コンポジットレジンの種類によっても異なりますが、寿命はおおむね2〜3年くらいです。
治療箇所が欠けた場合、再治療が必要ですか?
ダイレクトボンディングで治療した部位は、欠けたり割れたりしても残った部分を取り除くことなく、修復することができます。
前歯や奥歯に関係なくダイレクトボンディングはできますか?
ダイレクトボンディングは、浅い齲蝕なら前歯も奥歯も関係なく適応します。
できるだけ白い歯にしたいのですが、色は選べますか?
コンポジットレジンの色は選べますが、歯の残りの部分の色合いに合わせて選んだ方が自然な仕上がりになって良いでしょう。
神経を取り除いた歯には、ダイレクトボンディングはできますか?
神経を取り除いた歯であったとしても、虫歯で失われた部分が少ない場合は、ダイレクトボンディングで治せることもあります。治療の適応については、歯科医師の診断が必要です。
ダイレクトボンディングで治療したところが古く傷んできた場合、再度ダイレクトボンディングで治療することはできますか?
ダイレクトボンディングで治した歯に深い虫歯が再発していると、ダイレクトボンディングでの再治療は難しくなりますが、そうでないならダイレクトボンディングで治療しなおすことができます。
ダイレクトボンディングの治療概要
治療方法 | ダイレクトボンディング |
---|---|
治療説明 | 齲蝕を除去した窩洞に接着性コンポジットレジンを直接充填する齲蝕治療法です。 |
治療費 | 40,700円〜70,400円 |
治療の副作用(リスク) |
・咬合力による破折や脱落の可能性 ・経年変化による色調変化 ・表面粗造化によるプラークコントロールの悪化 ・二次カリエス ・神経治療や抜歯が必要となる可能性がある |
適応症例 |
・生活歯のC1・C2クラスの齲蝕症 ・外傷によるエナメル質の欠損症例 ・楔状欠損症例 ・根面齲蝕症 |
ダウンタイム | なし |
不適応の症例 |
・C3以上の齲蝕症や歯質の欠損症例 ・失活歯 ・咬合力による破損のリスクが高い症例 |